尊敬すべき、私の後輩達。

春の選抜大会は終わってしまいましたが、今回は高校野球の話を少々。
私の母校はかつて新庄剛士選手(阪神タイガース→MLB→日本ハムファイターズ)も所属した

野球の名門校です。
私が3年生の時には全国制覇を成し遂げ、私も甲子園まで応援に行きましたが、
正直なところ当時はさほど高校野球に関心はありませんでした。
しかし、歳を重ねるごとに興味が湧いてきて、

今はシーズンともなると暇さえあれば高校野球観戦ばかりしています。

数年前、母校の応援団の練習風景がテレビで放送されていました。
それを見て私は首を傾げてしまいました。
私の記憶が確かならば、母校に応援団はなかったはずです。解説を聞いてみると、

レギュラー選考から漏れてベンチ入りできなかった3年生を中心に結成した応援団とのことでした。
マイクを向けられた団員は満面の笑顔で

「これからは、応援や練習の手伝いでチームを支えます!」と爽やかに答えていました。
しかし、その横のグラウンドでは、3年生のレギュラー選手や1・2年生がボールを追いかけています。
それを横目に見ながら、高校生活最後の大会に出る可能性を絶たれた3年生がユニフォームから学ランに着替え、必死に声を張り上げて応援の練習をしている姿は、なんとも胸が詰まる光景でした。

母校は強豪校なので、野球部に入部する生徒のほとんどは

甲子園という夢の舞台に立つことだけを目標に高校に入学してきます。
その夢を叶えるために、遠方から親元を離れて入学してくる部員も少なくありません。
頭は丸坊主、自由のきかない寮生活、厳しい上下関係、

朝5時から始まる練習、放課後から夜遅くまで続く過酷な練習…。
彼らは甲子園の土を踏むために、敢えてこういった厳しい環境の中に身を置いて、
2年半もの間、まさに野球漬けの日々を過ごしてきたのです。
百名近い部員の中で熾烈なポジション争いを繰り広げながら、

最後の夏に照準を合わせて毎日を過ごしてきたのですから、
誰もがレギュラーの座を掴みたいと切に願っていることでしょう。

しかし、地区予選でベンチ入りできるのはわずか20人ほどです。
監督から名前を呼ばれなかった3年生は、
その瞬間に

甲子園出場を懸けた闘いに選手として参加できないことが決まり、
たとえチームが甲子園に行けたとしても、自分の足で憧れの土を踏むという夢も断たれてしまいます。
18歳の若者にとっては、あまりに残酷な現実です。
それでも彼らは、悔しさで声も出ないはずなのに、泣きたいほど辛くてたまらないはずなのに、
他のメンバー達に気を遣わせないため、

精一杯の背伸びとやせ我慢をして明るく振舞うよう努めるのです。
そして、現実を真正面から受け止め、

チームが勝つために自分がどんな役割を果たせばいいのかを真剣に考え、脇役を買って出るのです。

 

キャプチャ5

引用:西日本短期大学付属高等学校HPより(同校より掲載許可済み)

ふと自分を顧みると、私はもう彼らの倍程の人生を歩んできていますが、

同じ状況で彼らのように潔く振舞う自信はありません。
きっとこの経験を通して、彼らは何物にも代え難い真の強さと優しさを身に付けるのでしょう。
長い人生には、大切な物を守るために本音や私心を押し殺して、
今にも心が折れそうな状況で精一杯のやせ我慢をしなければならない瞬間が必ずあります。
このような時に私も彼らのように美しく振舞える強さを身に付けたいものです。
今回そのようなことを考えさせてくれた尊敬すべき後輩達に感謝です!
さて、もうすぐ夏の予選が始まります。
皆様もぜひ、グラウンドにいる仲間達と共に闘っている応援席の野球部員達にも注目してみてください。
きっと、これまでとは違う感動をもらえるはずです。

  参考文献:竹島由美子著『野球部員、演劇の舞台に立つ!』(高文研)