披露宴の司会と友人スピーチ。

厳しい暑さが続いておりますが、お元気でお過ごしでしょうか?
数か月前、友人から披露宴の司会を頼まれました。
私は以前仕事で葬儀の司会をやっていましたので、司会には少しばかり自信がありました。
とは言えかなりのブランクがあります。
そこで1週間ほど妻を相手に練習を繰り返し準備万端で披露宴当日を迎えました。
その甲斐もありなかなかの出来だったようで、同席していた友人には
「ちょっとお葬式っぽかったけどプロ並みやな~!」

と褒められました。一応謙遜してみせたものの、その気持ちのいい褒め言葉に

私はおそらく鼻を膨らませていたに違いありません。すると友人が続けてこう言いました。
「その腕前だったらスピーチなんかお手の物やろ!

今度の俺の披露宴の友人スピーチよろしく!」
この流れでは断るわけにはいかず、
私はまんまと友人の策略にはまり

人生初の友人スピーチをすることになってしまったのです。
披露宴の司会に比べれば友人スピーチなんて簡単だろうとタカをくくっていた私は、

自信満々で当日を迎えました。

ところがそこには想定外の困難が待ち構えていました。
私の地元では、友人スピーチの頃になると
みんな結構「出来上がっていて」好き勝手に騒いでいます。

つまり誰も聞く耳持たない状況でスピーチをしなければならないことに、

直前になって気が付いたのです。
あいにく私には、その中で列席者を引き付けるほどのカリスマ性もなければ
スピーチ力もありません。

危機感を募らせた私は、何かインパクトのある「ツカミ」を編み出すべく、

同じテーブルの人達に助言を求めました。すると

「最初のお辞儀の時、頭をわざとマイクに頭をぶつけてみたら!」とか
「日本語のたどたどしい外人さんの真似して、タダイマ~ゴショ~カイニアズカリマシタ、

シンローノフレンドノ ツツミデースって言ったら?」
等々、有難くも使えそうにないアイデアが次々に寄せられました。
その明らかに面白がっているだけの助言の数々に失望しかけていると、話題を聞きつけた隣のテーブルの人から
「小細工なしで序盤から列席者を巻き込むしかないよ!」という正攻法のアドバイスを頂きました。
そこで急きょ、普段よく聞いて物真似をしている

綾小路きみまろさんの漫談風に話してみることにしました。

司会者に促されいよいよスピーチの開始です。その際に司会者が

「皆様しばしの間ご静聴くださいますようお願い申し上げます」

と付け加えたことからも、その時の騒々しさが分かって頂けるかと思います。
私は調子づけにお酒を一杯だけ口に含み、マイクの前に立ちました。
お決まりの挨拶をした後にふと周りを見渡すと、やはり想像通り誰も話を聞いていません。

ここからが勝負です。

 皆様、ごらんの通り、新郎の登君は本当にカッコいい男です。
 お父様の清さんに似て実にイイ男でございます。
 (中略)
 しかし、敢えて私は申し上げます。

 男は顔ではございません。大切なのは中身です。
 とはいえ、登君は中身もイイ男です。

 その若々しい今どきの外見からは想像もできない位、

 礼儀正しく律儀で、しかも義理人情に厚い男です。
 一言で言うなら、なんだか懐かしい昭和の香りがする男なのでございます。

 しかし、昭和の男である登君には心配な点もございます。
 昭和の時代と言えば「亭主関白」の時代でした。
 「亭主関白」実にいい響きの言葉です。
 私の永遠の憧れでもございますが、
 そもそも「関白」とは一番偉い位ではなく、天皇を補佐する二番目の位なのだそうです。
 ということは亭主関白と威張っていても悲しいかな、亭主は二番目なのです。
 では誰が一番なのかと言えば、それは言うまでもなくカミさんでございます。

あれほど騒がしかった会場がちょっとだけ静かになったような気がします。
いいぞいいぞ…。みんな耳を傾けてくれている!そして話は佳境に入り、


 家庭で一番偉いカミさんを幸せにすることが関白の仕事であり、
 そのためにどれだけカミさんを手助けできるか、どれだけ上手にカミさんの尻に敷かれるか、
 これを追求するのが真の亭主関白道なのでございます。
 そして、幸せな毎日を過ごせている女性の顔は間違いなく美しいと言います。
 ですから、妻の顔は「夫としての通知表」なのです。
 男は自分の顔に責任を持つ前に、カミさんの顔に責任を持たなければならないのです。


この時点で会場を見回すと、大きく頷く人あり笑う人ありで、まずまずです。

いよいよ締めくくりです!

 

 皆様、ごらんくださいませ。新婦の真由美さんはとても綺麗です。
 しかし、この真由美さんが10年後20年後はたまた半世紀後に至るまで

 綺麗に輝いていられるかどうかは、ひとえに登君の努力次第なのです。

 また、この会場にいらっしゃる、たくさんの女性の方々のお顔を改めて拝見しますと、
 皆様、本当にお綺麗な方ばかりでございます。
 これもひとえに、奥様方の隣に座っていらっしゃる

 長年連れ添われたご主人様の愛情の賜物ではないでしょうか?

 

 ですから、私が冒頭に申し上げた登君がハンサムだとかハンサムじゃないとか、
 お父様の清さんがイケメンだとかイケメンじゃないとか、そのようなことはどうでもいいのです。
 本日、結婚初心者の登君に結婚6年目の私から、
 一人の友人としてではなく人生の大先輩として申し上げたいことは、たった一つです。


 登君、ぜひとも奥様の尻に上手に敷かれて、

 真由美さんをいつまでも美しく輝かせ続けて下さい。
 登君、真由美さん。本日は誠におめでとうございます!

 (新郎新婦の名前は別名で掲載しています)

 

スピーチが終わった瞬間に万雷の拍手…とまではいきませんでしたが、
拍手をしてくださった方たちがみんな笑顔だったことがとても印象的でした。
何よりも嬉しかったのは新郎新婦にとても喜ばれたことです。
実は、前にこのブログの中でも紹介した

『妻の顔は通知表』(全国国亭主関白協会・天野周一著)の話を

アレンジしたスピーチ内容だったのですが、同席していた友人からは

「まるで、きみまろやな~。あんなスピーチ初めて聞いたよ!」

と褒められました。おそらくまたしても私は鼻を大きく膨らませていたのでしょう、
次回はめでたくその友人の披露宴の司会を務めさせて頂くことになりました。
司会、スピーチと立て続けに貴重な経験をさせてもらい、友人たちには心から感謝しています!