
大切なお家のことだからこそ、「本当にこの工事は必要?」「だまされないかな」と不安になりますよね。
マイホームのリフォームは、大切な住まいを守るために欠かせないものですが、残念なことに詐欺が横行している事実はご存じでしょうか。
「住まいを守りたい」という消費者心理を悪用した リフォーム詐欺が後を絶たず、国民生活センター(消費生活センター)も注意喚起を繰り返しています。
突然業者が訪問し、強引に契約させられ数百万の被害が発生するケースも多発しており、注意が必要です。
そこで、本記事では悪質なリフォーム詐欺の実態や典型的な手口を解説します。
実際の事例や相談先を紹介するとともに、被害に遭わないための効果的な対策も解説しますので、ぜひご一読ください。

この記事の目次
悪質なリフォーム詐欺の実態とは|6つの手口&対応策を解説

リフォーム詐欺は年々手口が巧妙化しており、「自分は大丈夫」と思っていても騙されてしまうケースが後を絶ちません。
特に住宅リフォームは高額契約になりやすく、被害額が数百万円単位に及ぶことも少なくありません。
被害に遭わないためには、まず詐欺の典型的な手口を理解し、日頃から警戒心を持っておくことが重要です。
本章では、実際に多くの相談が寄せられている代表的な6つの手口と、その対応策を詳しく解説します。
① 飛び込み営業で無料点検される
リフォーム詐欺の典型的な手法の1つが「飛び込み営業(訪問販売)」です。
「この辺りのお宅を無料点検しています」
「無料ですので、屋根に上がらせてください」
こうした言葉で家主の信頼を得て、屋根や外壁の点検を行います。点検後には「瓦がずれています」「このままでは雨漏りになります」などと損傷を誇張して告げ、不安を煽ることで強引に契約を迫ります。
実際には損傷がないのに「大きなひび割れがある」と虚偽を告げるケースや、写真を加工して被害があるように見せかける手口も報告されています。無料点検を装った飛び込み営業は、まず詐欺を疑うべきでしょう。
このような訪問販売が来た場合は、その場での点検や見積もり依頼、契約はしないようにしましょう。名刺だけ受け取って後日家族同席の上、2~3社の業者に点検や見積もりを相談すると安心です。
② 火災保険や補助金を悪用したリフォーム詐欺
「火災保険」や「補助金制度」を悪用したリフォーム詐欺も横行しています。
「ご加入されている火災保険を使えば、自己負担なしで修理できます」
「国の補助金を活用すればリフォーム費用が全額戻ってきます」
といった甘い言葉で契約を迫ってきます。実際には保険や補助金の対象外であるにもかかわらず、虚偽申請をさせられたり、保険金を業者に横取りされたりするケースが少なくありません。
特に台風などの自然災害後は、この手口による被害相談が急増します。
「災害を理由にすぐに修理しないと危険だ」と急かすことで、無理矢理リフォームを迫るためです。火災保険の適用範囲や補助金の有無は、自分で保険会社や自治体に直接確認することが大切です。
③ 不安や恐怖をあおって契約させる
住宅のリフォームは「安心・安全」に直結するため、心理的に不安を突かれると冷静さを失いがちです。悪質業者はこうした消費者心理につけこみ、不安を煽ってリフォームさせようとします。
「このままでは家が倒壊します」
「床下にシロアリが繁殖しています。すぐに駆除しないと危険です」
こうした言葉を浴びせられると、大切な家を守りたいという心理が働き、慌てて契約してしまいます。実際には危険性がないのに誇張して説明されるケースや、耳慣れない専門用語を並べて威圧する業者もいるため注意が必要です
恐怖心を利用する手口では、相場をはるかに超える高額契約を結ばされるケースも見受けられます。特に高齢者世帯が狙われやすいため、家族が日頃から注意を促しておくことも必要です。
④ 見積もりと実際の請求金額が大幅に異なる
「外壁も傷んでいるので追加工事が必要です」
「屋根に想定していない損傷が見つかりました」
当初は「工事費用は100万円程度」と提示されていたにもかかわらず、工事が始まってから理由をつけて金額が膨らみ、最終的に200万〜300万円を請求されるケースもあります。
見積もり時よりも高額の金銭を要求する手口は、契約書を取り交わしていなかったり、契約内容が曖昧に記載されているときに発生しやすいとされます。
契約前には必ず書面で金額の範囲と工事内容を明示させることが重要です。
⑤ 不具合が修理されていない
高額な工事費を払ったのに、依頼した不具合が全く解消されないトラブルも後を絶ちません。
例として、外壁を塗装したのにすぐに剥がれた、屋根を修理したのに雨漏りが再発した、といったトラブルです。
修理が終わった直後は一見きれいに見えても、数か月後に不具合が再発することもあります。
業者に修理のやり直しを依頼しても「保証対象外」などと言って逃げたり、そもそも連絡が取れなくなるケースも少なくありません。
こうした被害を防ぐには、事前に「保証内容」や「アフターサービス」の有無もしっかりと確認することが不可欠です。
⑥ 不必要な追加工事をされる
最後に挙げる詐欺の手法は「不必要な追加工事」が行われるケースです。
「屋根の修理ついでに外壁もやった方がいい」
「床下が危ないので基礎工事も追加すべきです」
と、次々と不要な工事を勧め、最終的に数百万円規模の高額契約に膨らませます。
特に知識の乏しい高齢者層が狙われやすく、「専門家が言うなら必要なのだろう」と思い込んでしまうのです。悪質な業者の中には親切そうにふるまい、信頼関係を築いたうえで不要工事を重ねる業者もいます。
不必要な工事を防ぐためには、必ず複数の業者から見積もりを取り、比較することが欠かせません。

実際に発生しているリフォーム詐欺の事例

リフォーム詐欺は全国各地で被害が報告されています。では、実際に発生しているリフォーム詐欺には、どのような事例があるでしょうか。
この章では国民生活センターに報告されている事例を中心に、詐欺の実態を解説します。
被害額や件数のデータ
国民生活センターによると、2022年から2024年の訪問販売によるリフォーム工事でのトラブルは約1万件前後で推移しています。
点検を用いたリフォームのトラブルは2022年から増加傾向にあり、2024年は約2万件に達しました。この数字は2022年の約8,000件を大きく上回り、2.35倍の伸び率です。
被害額は数十万円から数百万円に達するものまで幅広いですが、少額被害が多いことも特徴の1つです。
屋根のリフォームなど1件の工事代金が500万円未満の場合は、国や自治体からの建設業許可が不要のため、悪質な業者はこの点を狙って参入しています。
実際に2023年度、国民生活センターに寄せられた訪問販売によるリフォーム工事に関する相談のうち、94%が500万円未満とされ、NHKも注意喚起のために報道しています。
参考:独立行政法人 国民生活センター 訪問販売によるリフォーム工事・点検商法
参考:NHK 屋根壊された?悪質リフォームに注意(2025年2月28日配信)
屋根の修理を偽って金銭を請求したケース
実際に多く報告されているケースに、「屋根の修理を偽る」リフォーム詐欺が挙げられます。
業者が突然訪問し「屋根瓦がずれています」「今のままでは雨漏りが発生します」といった屋根にまつわる不安を煽るような説明を行います。しかし、実際には修理の必要がないケースが多いのです。
家主側は屋根の状態を自ら確認することは難しいため、その場で契約を結んでしまい、高額な請求を受けるケースが後を絶ちません。
屋根の修理は専門知識が必要で素人が判断できない領域であることから、台風などの自然災害後の住まいや、高齢者世帯を中心に被害が多発しています。
参考URL 独立行政法人 国民生活センター 屋根工事の点検商法のトラブルが増えています-典型的な勧誘トークを知っておくことで防げます!
シロアリ被害をうたった点検商法のケース
「床下にシロアリが発生しており、このままでは家が崩れてしまう」といった脅し文句で契約を迫る点検商法も代表的なリフォーム詐欺のひとつです。
無料点検と称して床下に入り込み、実際にはシロアリがいないにもかかわらず、シロアリ被害を偽装して高額な消毒費用や補修工事を契約させる手口です。
実際に、2024年には石川県でシロアリ駆除の工事代金名目で女性から計660万円を詐取した業者が逮捕されています。
被害者の中には、床下の写真を改ざんされたり、シロアリの死骸を持ち込まれて「これが出てきました」と示されたケースもあります。シロアリは家屋に大きな損害を与える可能性があるため、家主側が冷静な判断を失いやすく、数十万円単位の契約に応じてしまう例が後を絶ちません。
参考URL 産経新聞 シロアリ駆除装い詐欺 容疑で埼玉の業者ら逮捕、石川(2024年10月3日配信)
他社より明らかに高額の費用を請求していたケース
同じリフォーム内容であっても、他社の相場より著しく高額な費用を請求する業者も存在します。
SNSに派手な生活を投稿していた業者が逮捕された事件は、建設業の許可(※)を受けずに500万円以上のリフォーム工事を請け負っていました。
強引に住宅に押しかけて法外な工事費を取る「点検商法」を行っていたと考えられており、許可を得ていないにもかかわらず高額の契約を取り付けるために、違法に契約書を分割していました。
こうした手法は本事件以外にも多発しています。明らかに高額な見積もりだった場合は、専門家へ相談することが大切です。
参考URL 朝日新聞 被害相次ぐ点検商法 「スーパーサラリーマン」も摘発、高額請求か(2025年5月10日配信)
(※)500万円以上のリフォーム工事を行うためには、都道府県または国土交通省の「建設業許可」が必要です。
もしもリフォーム詐欺に遭ったらどうする?主な相談先とは

リフォーム詐欺の被害に遭ってしまった場合でも、決して泣き寝入りする必要はありません。
早めに専門家へ相談することで、契約をクーリング・オフできたり、被害金が回収できる可能性があります。
では、実際に相談する場合はどのように準備し、どこへ相談すべきでしょうか。そこで、本章では相談前にやっておくべき準備と、主な相談先について解説します。
相談する前にやっておくべきこと
専門家へ相談する前に、以下の準備をしておくようにしましょう。
①契約書や見積書、領収書、業者とのやり取りの記録(メール・LINE・録音など)を保存し、相談先にて速やかに閲覧したり、データを提供したりできるように整理する
②リフォーム工事が既に完了している場合、工事の箇所について写真を撮影しておく。工事期間中の写真や動画がある場合も同様に保管する
③時系列で出来事をメモにまとめておく
リフォーム詐欺では詐欺の証拠を残しておくことが大切です。その後警察に被害届を提出したり、次に紹介する専門家へ相談する際にも必要ですので、データや書類を紛失しないよう適切に保管してください。
また、相談先によっては話せる時間が限られているため、速やかにアドバイスが得られるように相談内容をメモにまとめておくことがおすすめです。
国民生活センター(消費生活センター)
全国には800か所以上の消費生活センターや消費生活相談窓口が設置されており、地域の住民が気軽に相談できる体制が整えられています。
また、全国規模で対応を行う「独立行政法人国民生活センター」も存在し、各地のセンターと連携しながら悪質業者の情報を集約しています。
詐欺被害の対策や、事例も公表しているため、リフォームの契約内容や施工状況などに疑問を感じたらサイトを確認してみることもおすすめです。
リフォーム被害に遭ったかもしれないと感じたら、1人で悩まずにまずは最寄りの消費生活センターや国民生活センターに相談しましょう。下記リンクより、全国の消費生活センターなどが検索できます。
参考URL 独立行政法人 国民生活センター 全国の消費生活センター等
弁護士
リフォーム詐欺については、弁護士への相談もおすすめです。弁護士は依頼者の代理人として、契約内容に不当な点があれば契約の無効や取消を主張し、返金請求や損害賠償請求も行います。
さらに、契約から8日以内であれば「クーリング・オフ制度」を利用して契約を解除できる可能性もあり、弁護士はその適用可否も判断可能です。(クーリング・オフについては消費生活センターでも相談できます)
クーリング・オフ期間を過ぎてしまった場合でも、業者が事実と異なる説明をして契約を結ばせた場合には、民法上の「詐欺」や「錯誤」として契約を取消できる可能性があるため、諦めずに相談しましょう。
強引な勧誘はすぐに警察へ
訪問販売の際にドアを無理やり押し開ける、ハンコを押せなどの脅迫的な言動を受けた場合は、迷わず警察に通報してください。
こうした悪質な行為は消費者トラブルではなく刑事事件に該当します。「恐喝」「詐欺」などの事実を把握すると、逮捕してくれる可能性もあります。

悪徳リフォーム業者を見極める対策ポイント

詐欺を行う悪徳リフォーム業者には一定の特徴も見られます。特徴を事前に把握しておくことで、詐欺被害を防ぐ効果が期待できるでしょう。そこで、本章では悪徳リフォーム業者を見極めるポイントを3つに分けて紹介します。
①契約締結前に不安点はすべて確認する
工事内容や施工などにかかる費用、工期や保証内容などは必ず書面で確認しましょう。あいまいな説明しか行わない、契約書を用意してくれない業者は要注意です。
②複数の業者に見積もりを依頼する
悪徳リフォーム業者はすぐに契約を締結させようとします。しかし、工事費用の相場は1社だけの見積もりではわかりません。
必ず2〜3社に見積もりを取り、比較した上でどの業者に依頼するか判断しましょう。
③公的機関や口コミをチェックする
国土交通省が登録する「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」に加盟しているかを確認することもおすすめです。
この団体に加盟している業者は、国土交通省の一定の基準を満たした信頼性の高い事業者とされています。契約前には業者名を公式サイトで検索し、登録の有無を確認しましょう。また、見積書や契約書の内容も必ずチェックし、不明点はその場で質問することが大切です。
また、過去の評判やトラブルの有無を調べることも、有効な判断材料となります。Google上にある口コミなどにも目を通しておくとよいでしょう。
しつこい電話営業が繰り返される場合は、電話番号を検索することで業者の口コミがわかるケースもあります。
参考:国土交通省 建設業者・宅建業者等企業情報検索システム

よくある質問

この章では、リフォーム詐欺に関するよくある質問を3つご紹介します。返金や通報に関する疑問にもお答えしますのでご一読ください。
①リフォーム詐欺はまずどこに通報すればいいですか
リフォーム詐欺の被害に遭った場合、まずは各地域の「消費生活センター」へ相談することが一般的です。専門の相談員が状況を聞き取り、適切な解決策を提案してくれます。緊急性が高い場合は警察に通報しましょう。
また、被害額が大きいときは、弁護士に相談して法的対応を検討することも大切です。ただし、弁護士に依頼する際は費用が発生するためご注意ください。
②リフォーム詐欺は返金されますか
状況によって返金の可能性はあります。契約から8日以内であれば「クーリング・オフ制度」を利用できる場合があり、契約を取消できる可能性があります。
また、悪質な詐欺行為が判明したら損害賠償請求も可能です。ただし、返金を確実に受けるには専門知識が必要となるため、弁護士への相談が有効です。
③屋根のリフォーム詐欺の事例を教えてください
代表的な事例として、「このままでは雨漏りしますよ」と突然訪問して不安をあおり、不要な工事を高額で契約させるケースがあります。
実際には問題がないにもかかわらず、点検を装ってこっそりと屋根を壊し修理を迫る悪質業者も存在します。このような被害を防ぐためには、訪問販売業者の言葉を鵜呑みにせず「家に上げない」ことが大切です。屋根の状態が不安な場合は、複数の専門業者に点検や見積もり依頼をすると安心です。
まとめ

リフォーム詐欺は決して珍しいトラブルではなく、誰にでも起こり得る身近な問題です。特に高齢者世帯は悪質業者に狙われやすいため、家族ぐるみで注意を払うことが欠かせません。
被害を防ぐためには、まず典型的な詐欺の手口を知り、相手の言動に不自然さがないかを冷静に見極める姿勢が大切です。また、少しでも不審な点があれば、1人で抱え込まずに早めに消費生活センターや弁護士などへ相談することが重要です。
