2025年4月施行!建築基準法改正のポイントとリフォームの注意点をわかりやすく解説

2025年4月に施行された建築基準法の改正により、住宅のリフォームを取り巻くルールや手続きが大きく変わることをご存じでしょうか。これまで「リフォームだから建築確認(※)は不要」と思っていた工事も、今回の改正によって申請が必須になるケースが増えています。

改正の背景には、近年多発する自然災害や住宅老朽化問題があり、国が住宅の安全性・省エネ性能の底上げを図ろうとしていることが考えられます。

本記事では、2025年4月に施行された建築基準法の改正内容を踏まえ、リフォームを検討する際に押さえておきたい注意点を、わかりやすく解説します。

(※)建築確認とは?

建物を新築・増改築する際にその計画が法律(建築基準法など)に適合しているかを、行政や指定確認検査機関が事前にチェックする手続きのことです。

これを経ずに工事を始めると「違法建築」となり、後から罰則や是正命令を受けるおそれがあります。リフォームでも構造を変える場合や、用途変更を伴う場合は、この手続きが必要になるケースがあります。

記事監修者

安藤

建築士の安藤です。リフォーム業界歴20年。住まいを通じ、豊かな暮らしをお届けいたします!!ゆうネット公式YouTubeでリフォームお役立ち情報も配信中。

2025年4月の建築基準法改正が与えるリフォームへの影響とは

2025年4月の建築基準法改正は、これからリフォームを行う場合にどのような影響があるのでしょうか。

結論から言うと、今回の改正によりこれまでよりもリフォームに関する手続きに時間がかかるケースが増えます。

これまで住宅リフォームの一部の審査で簡略化されていた「建築確認申請」が必要になったためです。そこで、この章では法改正によるリフォームへの影響をわかりやすく解説します。

①違法建築物のリフォームができなくなる

まず、大きな影響を受けるのが今の法律に合わない家(違法建築物)です。これまで「もう建ってるから」と見逃されてきた家でも、リフォームする時はしっかりチェックされます。


特に、敷地に対して家が広すぎる(建ぺい率が規定を超えている※)といった、法律に合わないまま建っているお家は要注意です。

改正後は法律に合うようにお家を直してからでないと、リフォームの工事を始めてもらえなくなる可能性が高まります。 

違法に増築された部分がある場合、その部分の撤去や改修が求められることもあります。特に中古住宅を購入してリフォームする場合や、相続した住宅をリフォームする場合は、契約前に「建築基準法をクリアしているか」を確認することが大切です。

※敷地を真上から見たときどれくらいの割合まで建物を建てて良いかを決めるルールのこと

②木造2階建ての大規模リフォームは建築確認申請が必須に

従来は4号特例(※)によって、木造2階建て住宅のリフォームは簡易的な申請で済むケースが多くありました。ところが、改正後、4号特例も見直しされるため耐震性・耐火性・省エネ性能に関わる大規模リフォームでは、すべて役所の厳しい審査(建築確認申請)が必要になります。

特に、構造計算書(建物の強さを確認する書類)などの提出が必要になるため、従来より手続きが増え、工期や費用が上がる可能性があります。

(※)4号特例とは木造2階建てなど比較的リスクの低い建物について、建築確認申請の審査を一部簡略化する制度のことです。4号建築物という区分に該当した建築物は、これまで一部が省略されていました。詳しくは後述します。

③再建築不可物件の増改築が難しくなる

再建築不可物件とは、原則として建て替えができない住まいを指します。

改正により、建て替えが難しいと判断される物件での増築や大規模リフォームはさらに難しくなりました。たとえば、屋根の葺き替え(ふきかえ)工事も、屋根材の種類変更や構造の補強が必要な場合などは、これまでよりも難しくなる可能性があります。特に安価で魅力的な物件をリフォームありきで購入してしまうと、購入後にリフォームができないといった事態が起きてしまうかもしれません。

中古物件を購入する際には、再建築不可物件に当てはまらないかを契約前に確認しましょう。

④住宅が密集しているエリア内でのリフォームが難しくなる

都市部や地方都市の旧市街地などの住宅が密集するエリアでは、防災上のリスクが大きいとされています。

今回の建築基準法改正では、避難経路の確保や防火性能の強化も重視されるため、リフォームや建替えが制限されるケースも出てきます。


特に老朽化した木造住宅が密集しているエリアでは、工事を進める上で「通路幅」や「隣家との距離」などが厳密にチェックされるため以前よりもリフォームが難しくなります。

⑤既存不適格物件のリフォームも注意が必要

「既存不適格」とは、建てた当時は合法だったけれどその後の法律改正(新しい耐震基準など)で、今の基準に合わなくなってしまった住宅を指します。

たとえば、1981年5月31日までに建築確認を受けた建物や住宅です。このような建物は旧耐震基準で建てられています。改正後は既存不適格物件をリフォームする場合にも、省エネや耐震基準を満たす追加工事が必要になることがあり、結果的に予算が膨らむおそれがあります。

建築基準法改正後に影響が出やすい代表的な工事項目

今回の建築基準法の改正で、影響が出やすい工事にはどのようなものが挙げられるでしょうか。知っておきたい項目を以下にピックアップします。

  • 間取り変更を伴うスケルトンリフォーム
  • 増築(2階の増設や部屋の拡張など)
  • 木造2階建て住宅の耐震補強
  • 中古住宅購入後のフルリノベーション
  • 密集市街地での建替えや大規模改修  など

こうしたリフォーム工事は、建築確認申請や追加審査が求められる可能性があるため、スケジュールや費用に及ぶ影響は、2025年4月以前よりも十分に注意する必要があります。

知っておきたい「4号特例」の縮小とは

今回の法改正で大きな話題となっているのが、この「4号特例」の見直しです。

これまでは、木造2階建て以下の住宅については、建築士の設計があれば一部の審査を省略できました。

しかし改正後は、構造・防火・省エネに関する審査が省略できなくなり、チェックを受ける必要があります。そこで、本章では今回の改正で注目の4号特例の詳細を、わかりやすく解説します。

つまり、「信頼できる建築士が設計したから省略しても大丈夫」だったものが、「どんな家でも役所の確認が必要」になったというイメージです。

縮小前後の比較

今回の改正では、4号特例が見直しされました。具体的には以下のように変更されています。まずは4号特例の対象物件をここで整理しましょう

・4号特例の対象物件は、都市計画区域内に建てられている「木造2階建て以下の住宅(延べ面積500平米以下、高さ13m以下、軒高9m以下)」、もしくは「平屋」や「延べ床面積200平米以下の非木造建築物」です。

では、4号特例の縮小とは具体的にどのような変更でしょうか。

例えると、この制度は「近所の病院のかかりつけ医の先生(信頼できる建築士)の紹介状」のようなものでした。これがあれば、大きな病院(役所)での基本的な手続きや一部の確認を省略できていたのです。

しかし今回の改正では、「紹介状があっても、その基本的な手続きや確認も含めて、大きな病院でしっかり受けなければならなくなった」とイメージしてください。

改正前木造2階建て住宅の多くは簡易的な検査でOK
改正後構造・防火・省エネに関する審査が必須化、4号特例という区分は廃止され、建築物は新たに1~3号へと整理、特例の一部は残される

4号特例が指す4号建築物は本改正で廃止されており、新たに分類されました。

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現行の分類(〜2025年3月)新分類(2025年4月〜)対象となる建築物の概要建築確認・審査省略制度の取り扱い必要な図書(主な変更点)
1号建築物1号建築物特殊建築物(大規模なもの)や大規模な非木造建築物変更なし(原則、建築確認・検査が必要、審査省略制度の対象外)変更なし
2号建築物2号建築物小規模な特殊建築物や中規模な非木造建築物変更なし(原則、建築確認・検査が必要、審査省略制度の対象外)変更なし
3号建築物3号建築物小規模な非木造建築物(平屋で延べ面積200㎡以下)変更なし(原則、建築確認・検査が必要、審査省略制度の対象外)変更なし
4号建築物新2号建築物木造2階建て(階数2以下、延べ面積500㎡以下等)木造平屋建てで延べ面積200㎡超都市計画区域内外に関わらず建築確認・検査が必要。審査省略制度(旧4号特例)の対象外となる。構造関係規定等の図書(構造計算書等)、省エネ関連の図書などが必要となる。
4号建築物新3号建築物木造平屋建てで延べ面積200㎡以下建築確認・検査が必要だが、引き続き審査省略制度(構造関係規定等)の対象となる。省エネ関連の図書は必要となる。

①建築物の分類が変更される

この改正のポイントは、建築物の分類変更と、それにともない建築確認・検査が厳しくなった点です。現行法で「4号建築物」とされていた小規模な木造建築物が廃止され、「新2号建築物」と「新3号建築物」に分けられました。

②審査項目が増える

「新2号建築物」に分類されることになった一般的な木造2階建て住宅は、これまで利用できていた4号特例(建築士が設計した際の構造関係規定等の審査省略制度)が適用されなくなり、詳しい審査が必要になります。つまり、これまで以上にリフォームを行うには「時間がかかる」おそれが高まったのです。

新2号建築物では、これまでの審査に加え、建築基準法に定められた耐震性の規定について、細かな審査が義務付けられます。自然災害にしっかりと備えるためです。

住まいの安全性をより高めるために、耐火性(火事への備え)や避難に関する規定についても、審査を省略できなくなりました。

③必要な提出書類(提出図書)が多くなる

審査項目が増えるのに合わせて、建築確認申請で提出する書類も増加します。

これまで省略できた以下のような書類が、必須になります。

  • 構造計算書
  • 軸組図・梁伏図などの構造図
  • 省エネ基準に適合していることを示す性能計算書
  • 断熱材・設備仕様の詳細図書

これらの書類は施工主自身が用意することが難しい専門書類です。そのため、設計士や工務店が綿密に作成する必要があります。

必要書類の作成に時間がかかる分、リフォームや建て替えの準備期間が長くなりやすく、業務負担も増えることになります。

これからリフォームする際の注意点とは?

建築基準法の改正により、従来よりもリフォームの基準は高く設定され、時間がかかる可能性が上がります。

しかし、申請や必要書類などは普段から触れる機会は少なく、一般の方からすると、改正後に何を注意すべきか、わかりづらいのではないでしょうか。

そこでこの章では、どのような点に注意すべきかを法改正に明るくない方にもわかりやすく解説します。

建築確認申請が必要か必ず確認しよう

法改正によりリフォームの内容によっては、これまで申請が必要なかった工事でも建築確認申請が必須となるケースが増加します。

特に、以下の工事を行う場合は、自治体への申請が必要となる可能性が高くなります。

  • 主要構造部(壁、柱、床、梁、屋根、階段など)に大規模な修繕や模様替えを行う場合
  • 建築物の用途を変更する場合(住宅から店舗に改修するなど)

なかでも、注意が必要なのは「スケルトンリフォーム」です。築年数の古い住まいを活用したスケルトンリフォーム(骨組みだけを残して全面改修するリフォーム)を検討する場合、まずは専門家へ相談しましょう。

スケルトンリフォームは、建物の耐震補強や断熱改修をともなう柱や梁などの主要な構造部分に大きく手を加える工事です。改正後の法律では、これらの工事が「大規模な修繕」や「大規模な模様替え」に該当し、新2号建築物として時間がかかる建築確認・審査の対象になります。

今回の建築基準法改正は、住まいの安全性の確保と省エネ性能の向上を目的としていますが、これまで以上に申請手続きに必要な時間がかかるため、施工開始や入居希望時期をしっかり打ち合わせしていくことが大切です。

再建築不可物件のリフォームは専門家へ相談を

再建築不可物件は価格が安く、魅力的に見えるかもしれません。
しかし、その名の通り「再び建て替えられない物件」なので、リフォームが制限されるという大きなデメリットがあります。

今回の改正によって、木造2階建て住宅の主要構造部に手を加える大規模リフォームは、新2号建築物として厳しい建築確認・審査の対象になります。

再建築不可物件は、もともと現行の法律に適合していないケースが多いため、新しい基準を満たせずリフォームできない可能性もあります。

購入前やリフォーム計画の初期段階で、必ず建築士や専門の工務店に相談し、工事が可能かどうか確認しておきましょう。

工期・納期はゆとりをもってスケジュールを立てよう

法改正にともない、一般的な木造2階建て住宅のリフォーム(特に大規模なもの)でも、建築確認申請時の提出書類が大幅に増加しています。

具体的には、構造計算書や省エネ性能計算書などの非常に専門的な図書の作成です。

設計・申請準備期間はもちろん、建築確認審査期間も発生するため、着工までに案外時間がかかってしまうのです。

引っ越しや仮住まいの期間を計画する際には、従来の感覚よりも大幅にゆとりをもったスケジュールを立てることが欠かせません。

省エネ基準・耐震基準への対応にも注意

今回の法改正の大きな目的は、「安全で、省エネな住まいづくり」です。
そのため、リフォームによって「新2号建築物」に該当する場合、省エネ基準や耐震基準への適合が求められることがあります。

築年数の古い家を改修する場合は、

  • 断熱材の追加
  • 窓の高性能化
  • 耐震補強

などが必要になり、当初の予算を超える可能性もあります。

無駄なコストを防ぐためには、

  1. 計画の初期段階で、新基準に合わせるための工事内容と費用を把握
  2. 複数の工務店・リフォーム会社に見積もりを依頼して比較

こうした準備を丁寧に行うことが大切です。

よくある質問(FAQ)

本章では建築基準法改正におけるよくある質問を紹介します。

①リフォームを建築確認申請しなかったらどうなる?

もしも建築確認申請をしなかったら、違法建築となり役所からやり直しや工事中止命令が出る可能性があります。売却や住宅ローン審査にも大きく影響します。

違法建築物は将来的に住宅を売却しようとした際、買い手や不動産会社から敬遠され、資産価値が大幅に下がる可能性が高いでしょう。法律で定められた基準はしっかりとクリアすることが大切です。

②スケルトンリフォームも確認申請が必要ですか?

法改正により、木造2階建て住宅(新2号建築物に該当)のスケルトンリフォームは、原則として建築確認申請が必要になりました。

スケルトンリフォームとは、家の内装や設備だけでなく、壁や柱を抜いた間取り変更や耐震補強、断熱材の入れ替えなど、家の構造そのものに影響を与える大規模な工事のことを指します。こうした工事は、家の安全性や耐久性に関わるため、厳しい審査が求められます。

従来の「4号特例」と呼ばれる特例が適用されなくなったため、スケルトンリフォームでは耐震性・防火性能・省エネ基準など、建築基準法の各項目に適合しているかを役所が確認する必要があります。

リフォームを検討する際は、確認申請が必要かどうかを事前にリフォーム会社に確認し、安全で安心な工事を行いましょう。

③リフォームの2025年問題は建築基準法以外にもありますか?

2025年以降、「省エネ法改正」や「耐震関連法の強化」などいくつかの法律が複雑に絡み合って厳しくなっておりリフォーム・新築の双方に影響を与えています。

特に地震大国の日本では耐震への基準は厳しくなっており、旧耐震基準の建物はリフォームと同時に耐震補強工事が避けられないケースが増え、工事期間や費用が増加する可能性があります。

まとめ

2025年4月に施行された建築基準法改正は、リフォームを検討している人にとって大きな変化です。

違法建築や再建築不可物件は工事が難しくなり、木造2階建ての大規模リフォームも建築確認申請が必須となりました。さらに、省エネ・耐震といった追加基準が課されることで、費用や工期も従来より増える傾向にあります。

これからリフォームを計画する方は、必ず専門家へ相談し、建築確認申請の要否や追加工事の可能性を確認しておくことが大切です。

法改正を正しく理解し、計画的に準備を進めながら安全で快適な住まいを手に入れましょう。なお、優良工事店ネットワークではリフォーム会社選びの参考書「リフォームの青本」を発行し、ご希望の方へ無料でお送りしております。安心でお得にリフォームする秘訣や信頼できる工事店の選び方も紹介していますので、ぜひお手元でご覧ください。

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