【この記事は約3分で読めます】
執筆:二級建築士 安藤勉
→詳しいプロフィールはこちら

「まだ元気だから、住まいのことは今考えなくても大丈夫」
そう思っていませんか?
50代・60代では、介護を身近な問題として考える機会は少ないかもしれません。
しかし、今は問題なく暮らせている家でも、年齢を重ねると不便に感じる場所が出てくることがあります。
例えば、階段の上り下りや、玄関の段差、夜中のトイレまでの移動などです。
だからといって、今から「介護のための家」にする必要はありません。
大切なのは、元気なうちから将来の暮らしを想像し、少しずつ住まいを整えておくことです。
介護が必要になってからでは遅い?
介護が必要になってから、住まいをリフォームすることもできます。
ただし、体の状態が変わってからでは、工事が終わるまでの生活に不便を感じることがあります。
また、本人が希望するリフォームでも、住宅の構造や間取りによっては簡単に変更できない場合があります。
例えば、
- 階段を使わずに生活したい
- 寝室を1階へ移したい
- トイレを寝室の近くにしたい
- 浴室を1階へ移したい
- 玄関の段差を減らしたい
といった変更には、ある程度の工事が必要になることがあります。
そのため、まだ元気に動ける時期から、将来できることを確認しておくことが大切です。
まずは「将来もこの家で暮らせるか」を考える
最初からリフォームを決める必要はありません。
まず、現在の家を見渡してみましょう。
「10年後も、この階段を毎日使えるだろうか?」
「夜中にトイレへ行くとき、この距離を歩けるだろうか?」
「玄関の段差は将来も問題ないだろうか?」
このように、今ではなく将来の自分の生活を想像することから始めます。
今は問題なくても、将来負担になりそうな場所が見つかるかもしれません。
生活の中心を1階にできるか確認する
将来、階段の上り下りが負担になった場合、1階だけで生活できる間取りは大きな安心につながります。
まず確認したいのが、
- 寝室
- トイレ
- 洗面所
- 浴室
- リビング
の位置です。
これらが1階にまとまっていれば、階段を使わずに生活しやすくなります。
2階を使わなくなった場合でも、1階だけで生活できるようにしておくと、暮らし方を変えやすくなります。
→ 2階を使わなくなった家はどうする?1階だけで暮らせる間取りへのリフォーム
寝室は将来どこで過ごす?
現在の寝室が2階にあるなら、将来もその場所で寝るのか考えてみましょう。
階段の上り下りが負担になれば、寝室を1階へ移す方法があります。
使っていない和室や子ども部屋などを、将来の寝室として活用できる場合もあります。
今すぐ寝室を移す必要がなくても、1階に寝室として使える部屋があるか確認しておくと安心です。
→ 老後を考えて寝室を1階に移すべき?50代・60代で考えたい間取り
夜中のトイレまでの動線を確認する
将来の暮らしを考えるとき、意外と見落としやすいのが夜中のトイレです。
寝室からトイレまでが遠かったり、途中に階段があったりすると、夜間の移動が負担になる可能性があります。
寝室からトイレまで実際に歩いてみて、
「遠い」
「暗い」
「階段がある」
「ドアが多い」
など、気になるところを確認してみましょう。
必要に応じて、トイレの位置や照明、ドアなどを見直す方法があります。
夜中のトイレが遠い家はどうする?寝室とトイレの位置を見直すリフォーム
2階のお風呂は将来も使いやすい?
2階に浴室がある家では、お風呂に入るたびに階段を使います。
今は問題なくても、将来は入浴前後の階段移動が負担になるかもしれません。
1階に浴室を移すことで、1階だけで生活しやすくなる場合があります。
ただし、浴室の移動には給排水や換気などの工事が必要になることがあります。
また、浴室だけを1階へ移しても、洗濯機が2階にあれば家事のために階段を使うことになります。
浴室だけではなく、洗面所や洗濯機の位置も一緒に考えましょう。
→ 2階のお風呂は老後も使いやすい?浴室を1階へ移すメリットと注意点
玄関は無理なく出入りできる?
玄関も、元気なうちは気になりにくい場所です。
しかし、靴を履いたり脱いだりする動作が負担になることがあります。
特に確認したいのが上がり框の高さです。
必要に応じて、
- 腰掛け
- 手すり
- 段差の見直し
- 玄関まわりの照明
などを検討できます。
これらは介護が必要になってからでなくても、荷物を持っているときなどに役立ちます。
→ 玄関で靴を履くのがつらくなる前に|50代・60代で考えたい玄関リフォーム
室内ドアは開けやすい?
室内のドアも、将来の暮らしを考えるときに確認したい場所です。
開き戸は、開閉するために扉の前後へ移動する必要があります。
場所によっては、引き戸に変更することで動線を確保しやすくなります。ただし、壁の構造などによって変更できない場合もあります。
現在の生活でも使いにくいと感じるドアがあれば、将来のことも含めて見直してみましょう。
→ 開き戸から引き戸に変えた方がいい場所は?50代・60代で見直したい室内ドア
洗濯は1階だけでできる?
毎日の家事も、将来の暮らしを考えるうえで重要です。
例えば、
洗濯機は1階
↓
洗濯物を2階へ運ぶ
↓
2階で干す
↓
1階へ戻す
という動線では、毎日のように階段を使うことになります。
将来的に階段の上り下りを減らしたいなら、
「洗う・干す・しまう」
までの動線を見直してみましょう。
→ 洗濯を1階だけで終わらせたい!「洗う・干す・しまう」を楽にするリフォーム
収納は「増やす」より「取り出しやすさ」
年齢を重ねると、物が増え続けることも住みにくさにつながります。
特に、高い場所や奥行きの深い収納は、物を取り出すときに負担になることがあります。
収納を増やす前に、
「本当に必要な物か」
「よく使う物か」
「取り出しやすい場所にあるか」
を考えてみましょう。
使わない物を減らすだけでも、家の中は動きやすくなります。
→ 60代からの収納は増やすより減らす?取り出しやすく片づけやすい家のつくり方
掃除の負担も減らしておく
将来を考えるなら、掃除のしやすさも見逃せません。
家具が多い家では、掃除する場所も増えます。
また、物が床に置かれていると、掃除だけでなく歩くときにも邪魔になります。
収納を整理したり、家具の配置を見直したりするだけでも、掃除や移動がしやすくなることがあります。
「掃除しやすい家」は、年齢を重ねてからも暮らしやすい家につながります。
掃除が大変にならない家にするには?50代から考える「掃除を減らす」リフォーム
今すぐ工事をする必要はない
ここまで紹介した内容を見て、
「全部リフォームしないといけないの?」
と思うかもしれません。
しかし、すぐに大規模な工事をする必要はありません。
まずは、
- 階段を使わない生活ができるか
- 寝室を1階に移せるか
- トイレまでの距離はどうか
- 浴室はどの階にあるか
- 玄関に負担がないか
- 家事動線は長すぎないか
- 収納や家具が邪魔になっていないか
を確認してみましょう。
そのうえで、現在の生活でも便利になるところから少しずつ改善する方法があります。
「今も便利」を基準に考える
将来への備えだからといって、今の生活を我慢する必要はありません。
例えば、玄関に腰掛けを設ければ、将来だけでなく、靴を履くときにも便利です。
引き戸も、介護が必要にならなくても開閉しやすい場合があります。
洗濯動線を短くすれば、将来だけでなく毎日の家事も楽になります。
このように、今も便利で、将来も役立つリフォームから考えると、無理なく住まいを整えられます。
家族と「これからの暮らし」を話しておく
住まいの準備では、家族との話し合いも大切です。
例えば、
「将来も2階を使う?」
「寝室はどこにする?」
「階段を使わない生活になったらどうする?」
「今後もこの家に住み続けたい?」
といったことです。
こうした話は、介護が必要になってから急に始めるより、元気なうちに話しておいたほうが考える時間を持てます。
リフォームをするかどうかだけでなく、これからどんな暮らしをしたいのかを家族で共有しておきましょう。
リフォームは家全体を見て考える
将来の住まいを考えるとき、1か所だけを便利にしても、別の場所が不便になることがあります。
例えば、浴室を1階へ移しても洗濯機が2階にあれば、家事のために階段を使います。
寝室を1階へ移しても、トイレが遠ければ夜間の移動は残ります。
そのため、リフォームをするときは、
「この工事をしたら、家の中の動線はどう変わるか?」
まで考えることが大切です。
まとめ
介護が必要になってから、住まいをリフォームすることもできます。
しかし、元気な50代・60代のうちから将来の暮らしを考えておけば、慌てずに準備できます。
まずは、
- 1階だけで生活できるか
- 寝室はどこにするか
- 夜中のトイレまで遠くないか
- 浴室は使いやすい場所にあるか
- 玄関の出入りは無理がないか
- 室内ドアは開けやすいか
- 洗濯の上下移動が多くないか
- 収納や掃除に負担がないか
を確認してみましょう。
すべてを介護のために変える必要はありません。
今の暮らしを便利にしながら、将来も使いやすい住まいに少しずつ整える。
それが、元気な50代・60代から始める住まいの準備です。
リフォームを検討するときは、今困っている場所だけでなく、10年後、20年後の暮らし方も考えて、家全体の動線から計画することをおすすめします。
会社選びで迷う方へ
リフォームで失敗しないための知識は「青本・赤本」にまとめています。

※NHKでも紹介された冊子です
※累計100万部発行