屋根カバー工法

屋根のリフォーム工事には、色々な種類があります。屋根材の傷みが無く、雨漏りもしていない場合は塗装工事を行います。また、屋根材の下地まで損傷している場合は陶器瓦、板金、スレート瓦などを一度撤去して瓦を葺き替えます。今回は、上記2つに当てはまらない屋根リフォームの方法のご紹介です。その名も「屋根カバー工法」についてご説明いたします。※重ね葺きとも言います。
屋根カバー工法

屋根カバー工法とは?

屋根の葺き替え時に行う工法の1つです。カバー工法は、別名「重ね葺き」とも呼ばれています。既存の屋根を撤去せずに、上から新しい屋根をかぶせる工事です。
スレート屋根の傷みが激しくて塗り替えを行なえない場合、屋根を剥がして新しい屋根を葺き替えるのが一般的です。
しかし、この場合屋根を剥がす手間と屋根の処分費が、かかってしまいます。屋根材の表面にサビやひび割れがあっても、下地までは傷みが及んでいない状態でしたら屋根の上からスレートやガルバリウム鋼板を被せる工事ができます。
これを一般的にカバー工法と呼んでいます。屋根葺き替えリフォームの一つの方法です。

屋根カバー工法の特徴

・解体工事を必要としませんので、廃材がでません。
・結果として、屋根が2重になります。
以上の特徴から生まれる、メリットとデメリットを説明します。

■屋根カバー工法のメリット

〇工事費用が低く抑えられる
・通常の屋根材の葺き替えは、コンパネ(野地板)・防水シート・屋根材のすべてを撤去して、新しいコンパネ・防水シート・新しい屋根材を施工します。しかし、屋根カバー工法では解体工事がほぼ必要がなく、廃材が出ません。その結果、本来かかるはずの解体工事費と廃材撤去処理費などがかかりません。葺き替えと比べて、この2点でコストを削減できます。
*コンパネ(本来はコンクリートの型枠用合板を指す言葉であるが、建築現場においては、厚さ12mmの耐水ラワンベニヤを指します)
〇工事が短期間でできる
・解体・撤去工事を必要としないので、葺き替えに比べ工事の工程数が減ります。そのため、工事に費やす日数を短縮することができます。
〇雨漏り対策に有利
・屋根が重層になるため、雨漏りの心配がありません。
〇断熱性能があがる
・屋根が2重になるので、断熱効果が高くなります。夏の暑さや、冬の寒さを緩和でき光熱費の節約につながります。
〇遮音性がよくなる
・屋根が2重のため、遮音性があがります。雨音や航空機の騒音など軽減できます。
〇アスベスト対策
・最近、社会問題になっているアスベスト対策に対応する方法として用いられています。築10年以上のスレート屋根には、アスベストが含まれているものが多く、不用意に解体した場合粉塵を飛散させてしまう危険性があります。カバー工法では、屋根を解体しない為アスベストの飛散を防ぐことができます。ただ、アスベストの処理を考えた場合、費用がかかるのでこの点ではデメリットになります。

■屋根カバー工法のデメリット

〇屋根が重くなる ~ 耐震性が下がる
・既存の屋根材を撤去せずに、屋根のみを2重にするため、屋根の総重量が増えます。
屋根の重量が増すことで、建物の重心が高くなり地震の際に揺れが大きくなります。
家全体の強度にもよりますが、倒壊や損壊のリスクが上がります。新しい屋根材には、なるべく軽量な材質のものを選びましょう。
〇施工後の修理・メンテナンス費用が高くなる
・屋根が重なることで屋根構造が複雑になり、万が一雨漏りが発生した場合に原因究明が
難しくなります。そのための修理費用コストも高くなります。また、後年葺き替えをする際は、撤去の工事や廃材処理に屋根2つ分の費用がかかってきます。
〇屋根の下地部分が腐食してくる
・撤去しなかった既存の屋根材には、多くの水分が含まれています。丁寧な調査をせずにカバー工法を行うと、水分が溜まった状態が続き、屋根の下地を腐食させてしまいます。

屋根カバー工法に適した屋根

・屋根カバー工法には、工事が可能な屋根と、不可能な屋根があります。
工事が可能な既存の屋根は、平らな屋根です。例えば、スレート(平形)屋根や*アスファルトシングル・金属(トタン)屋根には最適です。不向きな屋根は、スレート(波形)屋根や瓦屋根などです。
*アスファルトシングル~基本材にアスファルトを浸透させ、表面を砂粒状に着色した軽量な屋根材。

屋根カバー工法 施工の流れ

・施工前に気をつけなければいけない点として、既存の屋根材を支えていた野地板(のじいた)の痛み具合によって、取るべき工事の方法が変わります。野地板が傷んでない場合は、防水シート(ルーフィングとも言います)を敷いて、新しい屋根材を施工しますが、傷んでいる場合は、新たに野地板を施工し、防水シート、屋根材の順で工事を行う必要があります。
ここでは、既存の屋根材をスレート材として説明します。

?既存屋根の棟板金(棟カバー)を撤去
・棟板金とは、スレート屋根の一番重要ともいえる頂点を止めている鉄板の事で、水切り金具ともいいます。カバー工法では、屋根をできるだけ平らにする必要があるため、まず屋根の中心になっている棟板金を取り外します。屋根材本体ははがさないので、主な廃材はこの棟板金だけです。

?防水シートを敷く
・屋根で最も多い問題が雨漏りです。雨水は構造内部にまで深く侵入してしまうので、家自体を腐らせることもあります。棟板金を撤去した後の上に、防水シートを敷き屋根に密着させます。

?新しい屋根材を葺く
・新しい屋根材は、軒先から設置していきます。屋根が2つに重なるため、重くなります。
そのため新しい屋根材には、比較的軽いものを使います。近年、ガルバリウム鋼鈑の使用が増えています。この屋根材は耐食性に強いので、酸性雨などに非常に強く、ヒビ割れの心配が
ないというメリットがあります。

?棟板金(棟カバー)の取り付け
・屋根材を設置した後、確実に固定するため棟板金を最後に取り付けます。また、板金どうしの合わせ目部分にはコーキングを施し、雨の侵入を防ぎます。

屋根カバー工法のメンテナンスとその後…

・カバー工法の耐久年数は、屋根材にもよりますが20~25年程度です。基本的には、メンテナンスは不要です。ただ、将来的に耐久年数が過ぎていけば、いずれ撤去を行う必要がでてきます。カバー工法で施工をした場合、2重になった屋根材をどう処分するのか、考えておいた方がよいと思います。2度目の葺き替えに、新たにカバー工法という選択肢は使えない可能性があります。

以上がカバー工法についての説明です。
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