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執筆:二級建築士 安藤勉
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「部屋に収納が少ないけれど、家具を増やす場所もない」
「天井近くの空いているスペースを収納に使えないだろうか?」
このように、部屋の高い場所を活用して収納を増やしたいと考える方もいるでしょう。
天井近くの空きスペースには、後から収納棚や吊り戸棚を取り付けることができます。
ただし、どの壁や天井にも設置できるわけではありません。
収納棚を安全に固定できる下地があるか、収納物の重さに耐えられるかを確認する必要があります。
また、高い場所の収納は、物を取り出しにくいという問題もあります。
この記事では、天井近くに収納を増やす4つの方法と、設置できる条件、工事前に確認しておきたい注意点を解説します。
天井近くに収納を増やす4つの方法
高い場所に収納をつくる方法は、大きく分けて4つあります。
収納したい物や設置場所に合わせて選びましょう。
1. 壁に吊り戸棚を取り付ける
吊り戸棚は、壁の高い位置に取り付ける扉付きの収納です。
キッチンだけでなく、洗面所、廊下、リビングなどにも設置できます。
扉があるため収納物が見えず、部屋をすっきり見せやすいのが特徴です。
また、棚の中にほこりがたまりにくいという利点もあります。
収納物を入れたときの重量も考え、壁に十分な強度があるかを確認しなければなりません。
特に、石こうボードと呼ばれる壁材だけでは、重い吊り戸棚を安全に固定できません。
壁の内部にある柱や補強材などに、確実に固定する必要があります。
2. 壁にオープン棚を設置する
壁の高い位置に棚板を取り付ける方法です。
吊り戸棚と異なり扉がないため、収納する物を見渡しやすく、圧迫感も抑えやすくなります。
例えば、リビングの壁面に棚を設けて、軽い収納ボックスや使用頻度の低い物を置く方法があります。
ただし、棚に扉がないため、収納物が落下する可能性があります。
人が頻繁に通る場所や、ベッド・ソファの真上には、落下時に危険となる物を置かないことが大切です。
また、棚板が長くなるほど、収納物の重さによってたわむ可能性があります。
棚の長さや奥行き、取り付け金具の間隔を考えて設置する必要があります。
3. クローゼットや押入れの上部に棚を増やす
クローゼットや押入れの上部に空きスペースがある場合は、棚を追加できることがあります。
このような上部の棚は「枕棚(まくらだな)」とも呼ばれます。
収納ボックスや季節用品など、普段あまり使わない物の保管に利用できます。
既存の収納スペースを活用するため、居室を狭くせずに収納量を増やせるのが特徴です。
収納建材メーカーの南海プライウッドでは、クローゼットや押入れに設置する枕棚セットを販売しています。
ただし、クローゼット内に棚を増やす場合は、ハンガーに掛けた衣類や収納扉と干渉しない高さにする必要があります。
棚を増やした結果、今ある収納が使いにくくならないよう注意しましょう。
4. 天井から吊り下げる収納棚を設置する
壁ではなく、天井側から金具などを使って棚を吊り下げる方法です。
例えば、洗濯機の上や収納スペースの上部などに、天井吊りの棚を設けることがあります。
設置できるかどうかは天井の構造によって変わります。
住宅の天井には、石こうボードなどの仕上げ材と、それを支える下地材があります。
建物の構造や天井裏の状態を確認し、収納棚を安全に支持できるか判断する必要があります。
また、照明器具や火災警報器、エアコンなどの設備に干渉しない配置も重要です。
天井近くの収納は、どの場所にも設置できる?
天井近くに収納を増やせるかどうかは、部屋の広さだけでなく、壁や天井の構造、周囲の設備によって決まります。
場所ごとに確認したいポイントを見てみましょう。
キッチン|調理の邪魔にならない高さが必要
キッチンでは、壁の上部に吊り戸棚を追加できる場合があります。
ただし、調理中に頭をぶつけたり、扉が照明や換気扇に当たったりしない位置を選ぶ必要があります。
また、コンロの近くでは熱や油煙の影響も考慮し、設置する収納の仕様やメーカーの離隔条件を確認します。
高い吊り戸棚は、奥の物を取り出しにくいことがあります。
収納部分が手の届く高さまで下がる昇降式の収納も選択肢ですが、後付けできるかは製品寸法や既存の吊り戸棚の仕様によって異なります。
洗面所・脱衣所|洗濯機や扉との干渉に注意
洗濯機の上や洗面所の壁面は、高い場所の収納を検討しやすい場所です。
洗剤の予備やタオルなどを保管できます。
ただし、縦型洗濯機では、ふたを開けたときに棚とぶつからないか確認が必要です。
ドラム式洗濯機でも、将来の買い替えや修理の際に棚が邪魔になる可能性があります。
また、湿気が多い場所では、収納材の耐湿性や換気にも配慮しましょう。
廊下|頭上の高さと通行の安全性を確認
廊下の天井近くに、浅い収納棚を設置できる場合があります。
廊下は床面積が限られるため、壁の上部を活用できれば収納を増やせます。
ただし、棚が通路に大きく張り出すと、頭をぶつけるおそれがあります。
収納棚の下端の高さや奥行きを確認し、通行の妨げにならないか考えましょう。
万が一、収納物が落下した場合の危険性も考慮する必要があります。
リビング・寝室|家具の上や人の頭上を避けて考える
リビングや寝室では、壁の上部に棚や収納家具を設置できることがあります。
ただし、ベッドやソファの真上など、長時間人が過ごす場所への設置は慎重に判断してください。
地震の揺れによって、収納物が落下する可能性があるためです。
また、大きな吊り戸棚を設置すると、部屋に圧迫感が出ることもあります。
収納量だけでなく、家具との位置関係や部屋全体の見た目も考えて選びましょう。
天井近くに収納を後付けするときの注意点
収納を設置できる場所でも、安全に使い続けるためには確認しておきたいことがあります。
壁の下地が弱いと、収納棚が落下するおそれがある
壁に棚や吊り戸棚を取り付ける際、特に重要なのが下地の強度です。
住宅の壁には、石こうボードの裏側に柱や間柱、補強用の木材などが入っています。
収納棚は、製造メーカーが指定する方法で、これらの下地に固定する必要があります。
取り付けたい位置に十分な下地がない場合は、壁の一部を開いて補強材を入れる工事が必要です。
棚本体と収納物の重さを合わせて考える
収納棚には、製品ごとに載せられる重さの上限があります。
例えば、LIXILの一部のキッチン吊り戸棚では、棚板1枚あたりの最大積載重量を20kgとしています。
高い場所ほど地震による落下対策が必要
高い場所に収納した物は、地震の揺れによって落下すると危険です。
扉付きの収納を選ぶ場合は、揺れで扉が開くことを防ぐ耐震ラッチなどの採用を検討しましょう。
オープン棚では、収納物の落下を防ぐための対策が必要です。
ただし、落下防止金具や耐震ラッチを付けても、地震による被害を完全に防げるわけではありません。
棚そのものが壁から外れないよう、確実に固定することが前提です。
また、重い物や割れやすい物は、高い場所に収納しない方が安全です。
エアコンや照明器具の近くは設置場所に注意する
天井近くには、エアコンや照明器具、火災警報器、換気設備などが設置されていることがあります。
これらの設備の近くに収納を取り付けると、空気の流れを妨げたり、点検や交換作業がしにくくなったりする場合があります。
特にエアコンの周囲では、メーカーが指定する設置・点検用のスペースを確保する必要があります。
火災警報器も、収納棚で覆ったり、煙を感知しにくい位置関係にしたりしないよう注意が必要です。
棚の寸法だけでなく、周囲の設備との距離も確認しましょう。
高い場所の収納は、使いやすさも考えて設計する
天井近くの収納は、空間を有効活用できる一方、使いやすさには注意が必要です。
日常的に使う物の収納には向いていない場合がある
高い場所にある収納は、物を出し入れする際に腕を伸ばしたり、踏み台を使ったりする必要があります。
特に重い物を持って踏み台に上がると、バランスを崩す危険があります。
毎日使う食器や衣類より、季節用品や軽い予備品など、出し入れの回数が少ない物を収納する方が適している場合があります。
高い場所に収納を増やす際は、単に収納量を増やすのではなく、何を収納するかまで決めておきましょう。
扉の開き方で使いやすさが変わる
吊り戸棚には、左右に開く扉や上方向に開く扉などがあります。
高い場所では、扉を開けても奥まで手が届かなかったり、開いた扉を閉めにくかったりすることがあります。
また、隣の壁や照明器具などに扉が当たることも考えられます。
設置前に扉の開閉範囲を確認し、無理のない姿勢で使えるかを確かめましょう。
収納の奥行きを深くしすぎない
収納量を増やそうとして棚の奥行きを深くすると、奥の物が見えにくくなります。
高い位置では特に、奥の収納物を取り出すことが難しくなります。
また、棚が部屋側へ大きく張り出すと、圧迫感が出たり、頭をぶつけたりする可能性があります。
収納したい物の大きさに合わせ、必要以上に奥行きを深くしないことが大切です。
天井近くに収納をつくる前に確認したいこと
リフォーム会社に見積りの相談をする前に、次の点を整理しておくと、設置方法を検討しやすくなります。
工事前のチェックリスト
✅収納を設置したい場所と高さが決まっている
✅何を収納するか、大きさと重さを確認
✅壁や天井に固定できる下地があるか確認
✅収納棚が扉や設備に干渉しないか確認
✅地震による収納物の落下対策
✅無理なく物を出し入れできるか確かめる
✅将来の使いやすさも考えている
壁の下地や補強の必要性については、自分で判断するのが難しい場合があります。
リフォーム会社には、次のような質問をしてみましょう。
「この壁に吊り戸棚を取り付ける場合、下地の補強は必要ですか?」
「収納したい物の重さに耐えられる設置方法ですか?」
「地震のときに収納棚や収納物が落下しないよう、どのような対策をしますか?」
「壁紙や天井の補修はどこまで必要ですか?」
見積もりを比較する際は、収納棚本体の価格だけでなく、下地補強、取り付け金具、壁紙の補修などが含まれているか確認してください。
天井近くに収納をつくれない場合の代替案
壁や天井の構造によっては、希望する場所への収納の後付けが難しい場合があります。
そのようなときは、別の方法も検討しましょう。
背の高い収納家具を設置する
壁に吊り戸棚を取り付けるのが難しい場合は、床に置く背の高い収納家具を利用する方法があります。
ただし、背の高い家具には地震による転倒の危険があるため、適切な転倒防止対策が必要です。
また、天井との間に空間が残る場合は、家具の上に物を無造作に積み上げないようにしましょう。
既存の収納内部を使いやすくする
クローゼットや押入れに空いている空間があれば、棚板の追加や配置変更によって収納量を増やせることがあります。
例えば、収納物の高さに合わせて棚の位置を変えるだけでも、使われていなかった空間を活用できる場合があります。
新しく壁に収納を取り付ける前に、今ある収納の内部を見直してみることも大切です。
高い場所ではなく、手の届く位置に収納を増やす
高い場所の収納は、出し入れの負担が大きくなることがあります。
日常的に使う物が多い場合は、腰から目線程度の高さに収納を増やした方が便利なこともあります。
例えば、家具の配置変更や引き出し収納の追加など、床面積を大きく増やさずに収納を改善する方法もあります。
収納を増やす目的が「片付けやすくすること」であれば、必ずしも天井近くにこだわる必要はありません。
まとめ|天井近くの収納は、安全性と使いやすさで判断する
天井近くの空きスペースには、吊り戸棚や壁付け棚、クローゼット上部の棚などを後から設置できます。
ただし、壁や天井に十分な強度があり、収納棚と収納物の重さを安全に支えられることが条件です。
また、高い場所の収納は、地震による落下や、物の出し入れのしにくさにも注意が必要です。
設置する前に、何を収納するのか、どのくらいの頻度で使うのかを考えておきましょう。
リフォーム会社に相談する際は、見た目や収納量だけでなく、取り付ける下地の確認、補強方法、落下防止対策まで説明してもらうことが大切です。
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