・耐震工事(たいしんこうじ)とは自然災害などで、特に地震で建物が倒壊するのを防ぐための工事のことです。現在の日本では、首都直下型地震や南海トラフ巨大地震など日本全国で大地震発生が予測されており、被害を最小限に食い止めるための一つの方法として、住宅や建築物の耐震化が重要になってきています。平成25年11月から、改正耐震改修促進法が施行され、病院、学校、ホテル、大型店舗など大規模建築物などに対する耐震診断の実施および結果報告が義務付けられました。また、政府や地方公共団体では、支援制度を設け、一般の住宅や建築物の耐震化を促進しています。この動きは、平成7年に起きた阪神・淡路大震災により亡くなられた方の約9割が建物の倒壊、家具の転倒によるもので、また昭和56年以前の建築物に被害が集中していたことが起因しています。こうした背景から、同じ年に「耐震改修促進法」という法律が制定され、平成25年11月に更に改正されました。
「耐震化」とは、強い地震でも構造物が倒壊や損壊をしないように補強すること。また、そのような構造に造りかえることです。
住まいを耐震化するには、事前に住まいの耐震性能を専門家に評価してもらい、耐震改修が必要かどうかの判断(耐震診断)をすることが必要です。特に旧耐震基準(昭和56年以前)で建てられたものは、全部が危ないというわけではありませんが、地震の発生における安全確保のため早急な耐震診断が必要でしょう。
・建築士などの専門家が、建物の壁の強さ・建物全体のバランス・接合部(継ぎ目)の状態や劣化状況などを調査・検査し耐震性を総合的に見ながら、建物の改修が必要かどうかを判定します。この耐震診断ができるのは、「耐震改修促進法」という法律に基づき、「建築士」であり「国土交通大臣が定める講習を修了した者」と定められています。依頼する場合は、建築士事務所(耐震改修支援センターのウェブサイトで検索)かまたは、住まいの地方公共団体(都道府県、または建築主事が置かれている市区)の住宅・建築担当窓口に問い合わせます。
?予備調査
・耐震診断レベルを設定するために必要な情報を収集します。
・設計図書や計算書、増改築などがわかる資料を準備します。
?本(精密)調査
・現地で、建物の主要な構造・骨組み(構造躯体)や外壁(非構造部材)・設備機器などの現在の状況を調査します。
・コンクリートや鉄筋の腐食・劣化を調べます。そのためコンクリートに穴を開け(コア抜き)採取し調査します。
?耐震性能の評価
・「予備調査」、「本調査」の情報をもとに、建築物の耐震性能を評価します。
・つぎのような耐震判断の基準により判定されます。
〈戸建(木造)住宅〉
・以下の4段階で評価します。「建築基準法」で想定した地震の力に対しての、倒壊の可能性を表しています。
◎ … 評点1.5以上 ~ 倒壊しない
〇 … 評点1.0以上1.5未満 ~ 一応倒壊しない
△ … 評点0.7以上1.0未満 ~ 倒壊する可能性がある
× … 評点0.7未満 ~ 倒壊する可能性が高い
?耐震改修準備
・耐震診断の結果、倒壊の可能性があると判定された場合、耐震改修工事が必要になります。建築士などと「耐震改修計画」の策定や設計を行います。内容は、工事費用や期間はどのくらいかかるのか、期間中の引越は必要かなどの、改修工事に向けての準備工程です。
この段階で、疑問点があれば、事前に把握し、工事業者との必要書類(契約書・設計図の確認)をチェックしておきます。
?耐震改修工事(概要)
〈戸建(木造)住宅〉 … 一般的な改修部分を説明します。
「基礎の補強」
・鉄筋コンクリートの基礎を打ち増す
古い建物の場合、基礎のコンクリートに鉄筋が入ってなかったり、石の上に土台を載せただけの「玉石基礎」になっていることがあります。このようなケースでは、その箇所を補強したり、鉄筋を打ち増しして補強をします。
「壁の補強と増強」
・強い壁をバランスよく増やします。強い壁(合板)を貼り付けて、1,2階同じ位置に建物の隅に配置すると効果的です。
・筋交いが接合部分と外れないよう金物で柱や梁・土台を固定し補強します。
・腐った部分、シロアリによる被害のある部分を取り替えます。
「壁の配置」
・壁の量を増やして、バランスよく配置します。
・ 耐震診断や耐震改修にかかる費用負担を軽くして、耐震化を促進するために、国や地方公共団体(都道府県または市区町村)が、補助・税制・融資に関わる支援制度を用意しています。
〈補助制度〉
◎「木造戸建て住宅を対象とする耐震改修補助金制度」
市町村が行う木造戸建て住宅の耐震化の促進を目的にした補助事業です。
次のような補助対象要件があります。
1)昭和56年以前に建築又は、工事着手した木造戸建て住宅であること。
2)耐震診断の結果、上部構造(地盤、基礎部分より上の構造物)の評点が、1.0未満であること。
3)耐震改修工事は、2)の上部構造評点を1.0以上に向上させること。
~ となっています。耐震診断から改修工事までの補助がありますが、補助対象要件・金額が異なっており、住まいの各市町村に確認が必要です。
◎「住宅・建築物安全ストック形成事業」
耐震診断や耐震改修を行う場合、その費用の一部を国と地方公共団体が補助する制度です。
補助内容 ― 住宅(共同住宅を含む)
耐震診断)… 交付率(補助)
「民間実施」建築士事務所などへ依頼する場合
国から1/3、地方公共団体から1/3の交付を受けることができます。
「地方公共団体実施」各地方公共団体に登録された業者へ依頼する場合
国から1/2の交付を受けることができます。
耐震改修および建替えも含めて)… 交付率(補助)
「民間実施」国が費用の11.5%、地方公共団体が同じく11.5%の補助をします。
「地方公共団体実施」国が11.5%の補助をします。
◎名称:「耐震対策緊急促進事業」…
前述の「住宅・建築物安全ストック形成事業」の支援に加えその補助的な制度として、緊急的な支援を行うため創設されました。内容は、平成27年度末までの時限措置(27年度末までに着手したものが対象)で、整備の状況によって国が単独で耐震診断・改修などへの補助を行います。
その他、耐震工事をおこなうと税制の優遇や融資制度があります。
〈税制の優遇制度〉
・一定の条件を満たしている場合は、所得税や固定資産税などの控除・減額を受けられます。
(所得税の控除)
・現時点では、平成29年12月末までの措置で、耐震改修の工事に係る標準的な工事費用の10%相当(上限が25万円)となっています。
(固定資産税の減額)
・平成27年12月末までの措置です。面積120?に相当分の額の2分の1(1年間)を減額できます。また、重要な避難路沿道にある場合は、2年間となっています。
〈融資制度〉
・住宅の場合、「独立行政法人住宅金融支援機構」により融資を受けることができます。
個人向け)… 融資限度額は、1000万円までで、住宅部分の工事費の80%です。
マンション管理組合向け)… 原則として1戸当たり500万円で、共有部分の工事費用の80%までです。
万が一に備え大切なわが家を地震から守るためには耐震工事が必要な場合があります。
耐震工事をするときは自治体の補助金や融資制度などを事前に調べておきましょう。
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