屋根は、建物の部位で最も雨風の影響を受ける場所です。日本は、台風や地震など自然災害の多く、屋根瓦がズレたり、割れてしまうと雨水が侵入し、雨漏れが発生することがあります。手遅れになる前に、定期的な点検とメンテナンスやリフォームが必要です。
屋根工事は、塗装や葺き替え、カバー工法と呼ばれる重ね葺きの他、瓦屋根であれば漆喰補修や板金の交換、雨樋の修理など様々です。ここでは、屋根工事と屋根修理の費用や、工事日数をはじめ、施工事例や業者選びのポイントを紹介します。
この記事の目次
屋根工事の費用相場と工事日数
施工別の早見表
施工内容 | 費用相場 | 工事日数 |
---|---|---|
塗装工事 | 40~60万円 | 7~10日 |
重ね葺き(カバー工法)工事 | 90~120万円 | 6~10日 |
葺き替え工事 | 120~180万円 | 6~14日 |
葺き直し工事 | 60~120万円 | 6~14日 |
コーキング補修工事 | 1~7万円 | 1~2日 |
漆喰補修工事/交換工事 | 3~25万円 | 1~3日 |
棟板金(むねばんきん)交換工事 | 20~35万円 | 1~3日 |
雨樋修理工事/交換工事 | 2~40万円 | 1~5日 |
足場設置 | 650~900円/㎡ | 半日~1日 |
屋根全体
屋根工事を業者に依頼する際には、実際に行われた工事の事例を参考にすることで大まかな費用や工事日数などを把握することができます。
ここでは、さまざまな屋根リフォームをご紹介します。
ただし、費用や工事日数はあくまでも目安であるため、工事内容や仕様によって大きく異なることにご注意ください。
また、費用に関しては別途足場代がかかるケースもあります。
塗装工事
コロニアル(スレート)屋根などの場合、一般的なメンテナンスが塗装工事です。
屋根塗装は外壁塗装と同時にするケースがほとんどです。
屋根の勾配によっては、屋根足場も必要となります。(費用相場は足場代も含む)
屋根の塗装工事は、下塗り+中塗り+上塗りの3回塗りが一般的です。費用相場は、使用する塗料で多少異なります。
また、耐用年数も使用する塗料で異なるため、塗料選びの基準にするのも良いでしょう。
また、コロニアル屋根の場合、縁切りという作業をしておかなければ、将来的に雨漏りの原因になるので注意が必要です。
重ね葺き(カバー工法)工事
既存屋根に重ね葺きする工事方法を「カバー工法」と言います。
屋根のメンテンナンスは塗装が一般的ですが、屋根の状態が悪い場合は塗装ができません。
その場合、よく提案されるのが「カバー工法」です。
既存屋根の撤去費用などが発生しないため、費用を抑えることができるので人気のリフォームです。
しかし、屋根材を重ねるため、屋根が重くなってしまうのがデメリットです。
葺き替え工事
葺き替え工事は、既存屋根材を撤去して新しくします。
そのため、カバー工法に比べて撤去費用や作業手間が増えるため、リフォーム費用が高くなります。
しかし、既存の屋根を撤去するため、屋根の下地などが痛んでいれば新しくすることができるのがメリットです。
また、カバー工法のデメリットである屋根が重くなる心配もありません。
既存屋根の状態がかなりひどく下地の心配がある場合は、葺き替えがおすすめです。
葺き直し工事
葺き直し工事では劣化した防水シートと野地板だけを新しいものに交換し、屋根材は既存のものを再利用しますが、珍しい工事内容です。
この工事は耐久性の高い瓦を使用した屋根に適しており、瓦屋根の住宅で雨漏りが生じている際などに行われます。
新たな屋根材を購入する必要がないため費用を抑えられるのがメリットですが、手間代は葺き替えと変わらないので、慎重に検討した方が良いでしょう。
ただし、屋根材に破損が生じている場合にはこの工事自体が適さないため、こちらも事前に屋根の状態をしっかりと確認しておく必要があります。
屋根の一部
屋根工事には上述したような屋根全体を対象とするものだけでなく、屋根の一部だけを対象とするものもあります。
そのような工事は費用目安・工事日数共に少なく、小規模なメンテナンスとして定期的に行うのが一般的です。
続いては、このような屋根の一部のみを対象とする屋根工事のポイントや、費用相場などを見ていきましょう。
コーキング補修工事
屋根の簡易的なメンテンナンスとして、屋根材の割れなどをコーキングで補修する方法があります。あくまでも補修なので、割れている箇所が多い場合は全体的なメンテナンスが必要になります。
費用相場は、補修箇所の数によって変わりますが、数箇所程度であれば1~3万円程度が目安です。
しかし、全体的に屋根材の割れを補修する場合や、作業の安全面上、職人が2人必要な場合は費用が少し高くなる可能性があります。
漆喰補修工事/交換工事
漆喰(しっくい)とは、屋根瓦の1番上の棟と言われる部分の土台を守るために塗り込まれた材料です。
漆喰の役割は、屋根の棟と瓦の間の隙間を埋め、雨風から守ることです。
そのため、割れたり、剥がれたりしたままにしておくと雨漏りの原因になったり、屋根の下地を痛めてしまう原因になるので、早めの補修が重要です。
漆喰補修は、一部分であれば費用も工事日数もあまりかかりませんが、全体的な補修や取替えになると費用相場が高くなります。
※屋根の形状などでも費用相場は大きく異なります。
棟板金(むねばんきん)交換工事
棟板金とは、屋根の頂点にある板金のことです。コロニアル(スレート・カラーベスト)、金属屋根などに使用しています。
棟板金のメンテナンスも塗装が一般的ですが、腐食して状態が悪い場合は、棟板金の交換が必要です。
棟板金は釘で固定しているため、飛び込み業者(訪問業者)が「釘が浮いているので、早く直さないと飛んでいきますよ!」と不安を煽るような営業をされることもあるので、注意が必要です。
釘が浮くことはありますが、まずは信頼できる業者に点検を依頼するようにしましょう。
釘の浮き程度の補修であれば、費用相場は1~3万程度。
全体の交換となると、20~35万円程度です。(屋根の形状などによって費用相場は大きく異なります。)
雨樋修理工事/交換工事
雨樋の破損やつまりは、生活に支障がないことから後回しにされる方も少なくありません。
しかし、雨樋のつまりや破損を放置してしまうと雨水が軒先から直接外壁にあたり、外壁の劣化を早める原因になります。
つまり、大事な家の寿命を縮めてしまう原因になるのです。
破損やつまりの補修の費用相場は、2~5万円程度で、工事日数も半日から1日程度なので、早めに修理することをおすすめします。
簡単な修理であれば、ホームセンターで売っている補修キットでご自身でやることも可能です。
全体的に雨樋が古くなっている場合は、すべて取替えが必要です。すべて取替えの場合は、足場が必要になるので外壁塗装などと合わせてやる方が良いでしょう。
費用相場は30~40万程度が目安となります。
屋根工事には足場の費用も必要!
基本的に屋根工事を行う際には足場の設置が不可欠となります。
ここでは、足場の費用相場と組立日数を見ていきましょう。
足場設置
全体的な屋根工事や樋交換の際は、足場が必要です。費用相場は、650~900円/㎡程度です。
一般的な2階建てだと、約20万円程度が目安になります。
そのため、屋根工事だけではなく、外壁塗装などと合わせて屋根のリフォームをする方がほとんどです。
また、屋根の勾配が大きい建物の場合は、屋根足場も必要で、費用相場は450~600円/㎡程度で、5~7万円程度が目安となります。
屋根工事で失敗しないポイント
屋根は見えない場所だからこそ、信頼できる業者に依頼することが何より重要です。
屋根リフォームで後悔しないためにも、いくつかポイントをご紹介します。
1.訪問業者とすぐに契約しないこと
「板金が浮いている…」「屋根が割れている…」などと不安を煽るような飛び込み業者(訪問業者)も少なくありません。
そのような業者の中には、屋根に上って、なんともなっていない屋根を故意に割ったりする業者もいるので注意が必要です。
慌てて契約するのではなく、まずは信頼できる業者に点検してもらうようにしましょう。
2.複数の業者から見積もりを取ること
屋根工事を依頼する業者を決めるために、複数の業者に相見積もりがおすすめです。
複数の業者に依頼することで、工事金額の適正価格の把握ができます。
相見積もりは、2~3社から取ることがおすすめです。
あまり多くの業者から見積もりを取ると情報が多くなりすぎて、その中から1社選ぶことが難しくなるためです。
3.工事内容・実績が確認できる業者に頼む
業者選びで重視すべきポイントは、工事実績や知識が豊富かどうか、また工事内容をきちんと説明し、分かりやすい見積内容になっているかどうかを確認しましょう。
現状に最適な工事内容かどうかの判断は素人には難しいかもしれません。
そのため、現状の説明、それに対する工事の提案・金額、その工事のメリット・デメリットなどを丁寧に説明してもらうようにすると良いでしょう。
4.屋根工事中に雨が降ったらどうなる?
当然、雨が降ると屋根工事はできません。天候を確認しながら工事時期を考えるため、日程に余裕をもって依頼する方が良いでしょう。
特に、梅雨時期や雪が降る地域については、注意が必要です。
万が一、工事中に雨が降ったりした場合は、ブルーシートなどで養生したりするので問題はありません。
予算別屋根工事の施工事例
ここでは、実際の屋根工事の詳細について解説していきます。
工事内容や工事日数の参考にしてください。
セメント瓦の塗装工事です。
セメント瓦は、下塗り作業が何よりも重要で、状態によってはかなりの手間暇がかかるケースもあります。
一般的に屋根塗装は、外壁塗装と一緒に行われるケースがほとんどです。
なぜなら、足場が1回で済むため、工事費用の節約になるためです。
屋根塗装だけであれば、工事日数の目安は3~5日程度です。
外壁塗装も含めた場合は、7~10日程度です。
スレートの塗装工事です。
スレートを塗装する際、タスペーサーという縁切り部材を入れて塗装します。これは、屋根材と屋根材がくっつかないようにするためです。
縁切り作業を行わないと雨漏りの原因になってしまうので注意が必要です。
屋根塗装だけであれば、工事日数の目安は3~5日程度です。
外壁塗装も含めた場合は、7~10日程度です。
屋根葺き替え工事も足場を設置して工事を行うため、外壁塗装などと合わせて工事をした方が費用を抑えることができます。
屋根を葺き替えの際は、下地の防水シート(ルーフィング)や野地板の交換も合わせて行うと良いでしょう。
屋根の葺き替えだけで工事日数は、6~14日程度が目安となります。
瓦からスレートに吹き替えた事例です。
瓦のメンテナンスは、漆喰などの補修だけですが、スレートの場合は10年程度で塗装のメンテンアスが必要になりますが、スレートは瓦より軽いため、地震などが発生した際は、揺れが少なくなると言われています。
屋根の葺き替えだけで工事日数は、6~14日程度が目安となります。
既存の屋根に新しい屋根材を重ねて張る方法をカバー工法と言います。
屋根リフォームではよく採用されている工事方法です。
既存屋根を撤去しないので、費用を抑えられ、工事日数も葺き替えよりは短くなるのがメリットです。
漆喰は、屋根瓦の1番上の棟と言われる部分の土台を守るために塗り込まれた材料で、年数が経つと割れたり、剥がれたりします。
漆喰は、部分的な補修が可能です。
屋根の勾配がゆるい場合は、作業は足場なしでも可能なので低予算で工事が可能です。
また、簡単は補修程度あれば、数時間で完了するので定期的な点検や補修がおすすめです。
屋根工事の費用を抑える方法
屋根工事はさまざまな種類がありますので、その費用を少しでも抑える方法を把握しておくと良いでしょう。
1.外壁塗装と合わせて工事をする
ほとんどの屋根工事では足場が必要です。
そのため、外壁塗装などを行う際に、一緒に屋根工事をするのがおすすめです。
一般的な戸建て住宅で、足場の費用は約20万です。
外壁塗装と別々に工事をしてしまうと、それぞれ足場代がかかってしまうからです。
2.火災保険が適用になることも!?
台風などの自然災害により屋根などが破損した場合、その修理については火災保険が利用できるケースがあります。
当たり前ですが、経年劣化による破損や不具合については火災保険は適用されません。
災害による破損があれば、加入されている保険にもよるので、まずは保険会社に相談してみてください。
3.定期的に屋根のメンテナンスを行う
雨風にさらされている屋根は、年数が経つと屋根材が割れたり、漆喰が剥がれたりします。
そのまま放置してしまうと雨漏りや屋根の下地を痛める原因になってしまいます。
すぐに補修すれば数万円で終わる工事も、長年放置することで葺き替えなど100万円以上の工事が必要になるケースもあります。
屋根は、自分で簡単に点検できるところではありませんので、破損などに気付かないこともあります。
そのため、信頼できる業者に定期的な屋根の点検とメンテナンスを行ってもらうことで、結果的に屋根工事の費用を抑えることができます。
屋根工事の業者選びのポイント
屋根工事では工事そのものだけでなく屋根の状態確認なども行う必要があり、すべての工程をしっかりと行ってくれる業者を見つけることが重要です。
続いては屋根工事を依頼する際の業者選びのポイントを見ていきましょう。
1.見積もり書や説明が分かりやすい業者を選ぶ
相見積もりをして工事金額を比較して業者を選ぶ人も少なくありません。
しかし、金額だけではなく、どのような工事で、メリットやデメリット、今後のメンテナンス方法などの詳細を丁寧に説明してくるかどうかを確認すると良いでしょう。
工事金額については、費用相場を把握しておく程度にして、現状に適した工事のご提案をしてもらえるか、その内容を丁寧に説明してくれるかどうかを業者選びのポイントにする方が良いでしょう。
2.知識・経験が豊富な業者を選ぶ
屋根工事を得意としている業者に依頼すれば、当然、失敗することはありません。
屋根工事に関する知識や経験が少ないと、現状に適した工事方法や内容を提案することができません。
そのため、その業者の屋根工事に関する知識と経験が豊富かどうかを確認する必要があります。
HPの施工事例を見て、施工実績があるかどうか、また口コミなどがあれば、参考にすると良いでしょう。
業者の担当者が屋根工事の知識がなく、工事自体を下請け業者に丸投げするような業者は避けた方が良いでしょう。
3.保証が充実している業者を選ぶ
屋根工事の内容にもよりますが、保証があるかどうかは契約前に業者に確認しましょう。
一般的に補修程度であれば、保証はありませんが、屋根の葺き替えやカバー工法などについては保証が付きます。
保証については、年数を重視してしまう方も少なくありません。
しかし、一番重要なのは保証内容です。雨漏りした場合に保証してくれるのかどうか、どのような場合に保証対象外なのかなどをしっかり確認してから業者を選ぶと良いでしょう。
まとめ
屋根工事にはさまざまな種類があり、屋根の状態に応じて最適な工事を行うことが大切です。
工事を依頼する前には大まかな費用相場や工事日数を把握し、その上で信頼できる業者を探すと良いでしょう。
また、外壁塗装などをやる際に一緒に工事をすると費用が抑えられるのでおすすめです。