屋根の防水とは、建物を雨漏りから防ぎ、建物内部に水が入ってこないようにする仕組みです。建物の構造自体も守ってくれます。
例えば、一般的な鉄筋コンクリート造(RC造)の屋上(陸屋根)は防水工事が施されています。鉄筋コンクリートの構造部分は鉄筋のまわりにコンクリートで覆われています。これにより、強いアルカリ性に覆われ、錆(さび)から保護されています。
防水が施されていなければ常に表面から空気の影響を受け、その化学反応により本来の性質が失われ、中性化していきます。その結果、水が外部から侵入し、鉄筋が錆びやすくなりコンクリートそのものの構造が劣化していきます。このような、構造の衰えを防ぐ意味でも防水は大切な部分です。
防水工法は、基本的に建物に水が入らないために、防水の層(膜)をどのような方法で作るかにかかっています。ここで紹介する工法は、その代表的なものです。
【防水工事の種類】
ウレタン防水(ウレタン塗膜防水)
ゴムシート防水
塩ビシート防水
FRP防水
アスファルト防水
〇ウレタン防水(ウレタン塗膜防水)
国内で施工される防水工法の約5割を占めており、最もポピュラーな工法です。
特徴…「塗る」防水工法です。液体状のウレタン樹脂を塗り付け、固まるとゴム状で弾性のある膜が出来上がります。
長所… 液体状の材質を用いるため、下地の形に馴染みやすく、複雑な形状にも適しています。施工も簡単で、短期間に終わる上低価格です。継ぎ目の無い防水の膜ができるので、屋上・ベランダなど場所を選びません。また、臭いや熱の発生が無いので、環境にも優しい工法です。改修時についても、以前に塗った防水層の上から、そのまま重ね塗りができ撤去する廃材も出ません。
短所… ウレタン材は紫外線に弱いため、経年による劣化や亀裂に弱い点があります。
既存の防水がシート状の場合、ウレタン防水とは相性が悪く不向きです。
寿命… 10年~13年程度
メンテナンス時期… 6年~7年毎
メンテナンス内容… トップコート(防水層を守るために、上塗りをする仕上げ用の透明な塗料)塗りをメンテ時期に行うとよいでしょう。
適した場所… 陸屋根、ベランダ等どの箇所でもお勧めです
〇ゴムシート防水
特徴… 「貼る」防水工法です。合成ゴム系のシートを接着剤などで、下地に貼る工法です。
長所… 材質が合成ゴムのため、伸縮性が高く、下地に亀裂がある場合も柔軟に適応できます。温度による材質の変化が少ないので、地域環境の影響を受けにくく耐用年数も長期です。
シートを接着剤と粘着テープで貼り付ける程度なので、工期も短く安くでき、狭い場所や目立ちにくいところの工事にも適しています。
短所… シートと下地を接着させるために、下地の面が平らである必要があります。あまり複雑な形状には不向きな工法です。シート同士を貼り合わせていくので、使用する接着剤の質により防水の効果が左右されます。接着剤の耐用年数に注意しておきましょう。
また、薄いシート1枚の防水のため、外部からの損傷に弱い点があります。
寿命… 10年程度
メンテナンス時期… メンテナンス不要。
適した場所… 陸屋根(屋上)に適しています。
〇塩ビシート防水
特徴… シートを「貼る」防水工事です。塩化ビニール樹脂のシートを接着剤で下地に貼り付けていきます。
長所… 紫外線・熱・オゾンに対し、優れた耐久性を保ちます。
シートは柔軟で曲げやすく施工も簡便で、改修工事における下地の撤去も不要です。
工期も短く、全体的に低コストで済みます。
短所… シートを貼っていく工法なので、接着面が平らであることが条件です。
塩化ビニールは、元来硬い素材であるため、急に曲げたりする場合、切断しやすくなります。
また、経年で劣化してくると割れやすくなります。
寿命… 15年程度(状態により、20年持つこともあります)
メンテナンス時期… 基本的にメンテナンス不要と言われていますが、お住まいの状況によりメンテナンスが必要な場合があります。
適した場所… 陸屋根(屋上)に適しています。
〇FRP防水
特徴… 「塗る」防水工法です。FRPとは、繊維強化プラスチックの略称で、特殊な樹脂をガラス繊維などで、強化・補強されて作られたプラスチックという意味です。塗布後は、表面に硬い膜を作ることで防水をします。
長所… ガラス繊維で補強しているため、軽量でありながら非常に強く耐久性に優れています。表面の膜には継ぎ目がなく、様々な形状の場所に施工が可能です。下地に対する吸着性も高く、剥がれる心配がありません。
短所… 長期間紫外線に晒されると劣化し、ひび割れしてしまいます。また、伸縮性に乏しく地震によりひびが入る危険があります。施工時には、化学物質の発生による臭い対策が必要です。
寿命… 10年~13年程度
メンテナンス時期… 6年~7年毎
メンテナンス内容… 定期的なトップコートの塗り替えをします
適した場所… ベランダやバルコニー
〇アスファルト防水
・歴史的にも古く、最も信頼性の高い工法です。
特徴… 「塗る」プラス「貼る」防水工法です。合成繊維の布(不織布)に、アスファルトを含ませたシート状(ルーフィング)のものを貼り重ね、形成していく工法です。
長所… 防水の層が厚く、水密性(液体が外部に漏れない、または内部に液体が入らない性質)に優れています。耐久性がかなり高く、耐用年数も長いのでメンテナンスの回数も少なくて済みます。
短所… アスファルトを高熱で溶かしますので、施工時には危険と共に刺激臭を発生します。
(最近では、臭いを抑える工法もあります)幾層にも重ねていくこの工法は、その分多くの手間がかかります。建物全体に重量がかかるため、木造建築などには向いていません。
寿命… 15年~20年程度
メンテナンス時期… 10年~13年毎
適した場所… 大型ビルやマンションなど、面積の広い屋上に適しています
・防水のメンテナンスは、いかに防水層を守り、維持していくかにつきます。経年劣化や、定期的なメンテナンスの怠りなどで、防水層が衰えてくると次の状態を招きます。
・保護塗料の色あせ(退色)
・防水層表面の膨らみ(膨張)
・シートの破れ(損傷、断裂)
・コンクリートのひびから植物の生育
そこで、日頃からつぎのことに注意し、チェックをするとよいでしょう。
1.防水層表面の点検 … 目視で塗装や表面に異常がないか、定期的に確認します。
2.ドレン部(排水口)の点検 … 周囲に土砂がたまりやすく、そこから植物が生えてきたり雨漏りの原因になります。土砂の清掃が必要です。
以上は、個人でもできる点検ですが、5年に一回は経験豊富な工事店に点検診断を依頼するのもよいでしょう。
←リフォーム成功ガイドに戻る
冊子請求・工事店紹介、その他リフォームのご相談