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執筆:二級建築士 安藤勉
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洗面台は、「立って使うもの」と考えるのが一般的です。
顔を洗う、歯を磨く、髪を整える。
今は立ったままで困らなくても、50代、60代になると、毎日の身支度を少し楽にしたいと感じることがあります。
「歯磨きだけでも座ってできたら楽なのに」
「朝の身支度でずっと立っているのが疲れる」
そんな小さな不便も、毎日のことになると気になります。
だからといって、洗面台をすべて座って使えるようにする必要はありません。
立って使う場所と、必要なときに座れる場所を組み合わせる方法もあります。
この記事では、50代・60代からの身支度を楽にする洗面スペースの考え方と、リフォームするときのポイントを紹介します。
洗面台は本当に「立って使うもの?」
洗面化粧台は、基本的に立った状態で使うことを前提に設計されています。
そのため、「洗面台は立って使うもの」と考えるのは間違いではありません。
ただし、すべての作業を立ったまま行う必要があるわけではありません。
たとえば、
・歯を磨く
・髪を整える
・化粧をする
・髭を剃る
・コンタクトを扱う
・肌の手入れをする
など、比較的時間がかかる身支度もあります。
こうした作業を毎日立ったまま行うことに負担を感じるなら、「少し座れる場所」を用意するという考え方があります。
「座れる洗面スペース」は何が便利?
洗面スペースに座れる場所があると、朝の洗顔は立って行い、その後の化粧や髪の手入れは椅子に座って行う。
このような使い分けもできます。
洗面所でちょっとした作業をするときに、腰掛けとして使うこともできます。
「洗面台そのものを座って使う」というより、「洗面スペースの中に座れる場所をつくる」と考えると、より快適な空間になります。
洗面台に「座れる場所」をつくる方法
洗面台に「座れる場所」を作るには、収納になっているスペースを一部空ける方法があります。座ったときに足を入れられるようになります。
これなら、洗面所の面積を大きく変えずに、座る場所をつくることが可能ですが、収納量は減ります。
洗面所はタオル、洗剤、日用品など、収納したいものが多い場所です。
「座れるスペースをつくるために収納が足りなくなった」ということにならないよう、何をどこに収納するかまで考えましょう。
洗面台の一部をカウンターにする方法
洗面台の横にカウンターを設けると、身支度をする場所として使えます。
椅子を入れられるようにしておけば、座って化粧や髪の手入れなどができます。
洗面ボウルの部分は立って使い、カウンター部分は座って使う。
このように役割を分ける方法です。
ただし、カウンターを設ければ必ず使いやすくなるわけではありません。
椅子を置いたときに邪魔にならないか、収納との位置関係はどうか、鏡をどこまで使えるかなどを一緒に考える必要があります。
鏡の位置でも座って使えるか確認する
洗面スペースを座って使えるようにする場合、意外と重要なのが鏡です。
立って使うことだけを前提に鏡を設置すると、座ったときに顔が見えにくい場合があります。
洗面台の高さだけを考えてはいけません。
・座ったときの目線
・立ったときの目線
・鏡の大きさ
・照明の位置
などをまとめて確認しましょう。
特に化粧や髪の手入れなど、鏡を長時間使う場合は、座った状態で実際に確認してみることが大切です。
洗面スペースは「収納」とのバランスが重要
洗面所をリフォームするとき、座れる場所をつくりたいという希望だけを優先すると、収納が不足することがあります。
洗面所では、
・タオル
・洗面用品
・洗剤
・掃除用品
・ドライヤー
・化粧品
など、さまざまなものを収納します。
そのため、座れる場所をつくるなら、その分の収納をどこで確保するかも考える必要があります。
たとえば、使っていない収納を整理したり、鏡の横に収納を追加したりする方法があります。
「収納を減らして座る場所をつくる」のではなく、「必要な収納量を確認してから座る場所を確保する」ことが大切です。
洗面所を広くすれば解決するとは限らない
「座れる洗面スペースにしたい」と考えると、洗面所を広げるリフォームを思いつくかもしれません。
しかし、必ずしも面積を増やす必要はありません。
・洗面台の幅を見直す。
・収納を整理する。
・洗濯機との位置関係を変える。
・造作カウンターを設ける。
こうした工夫によって、現在のスペースでも使いやすくできる場合があります。
リフォームでは、まず「何が狭いのか」を具体的に考えることが重要です。
✅洗面所そのものが狭いのか。
✅収納が大きすぎるのか。
✅洗面台の前に物が多いのか。
✅椅子を置く場所がないのか。
原因によって必要な工事は変わります。
50代からは「毎日の動作」を見直す
洗面所は、毎日何度も使う場所です。
だからこそ、ほんの少しの使いにくさでも積み重なります。
たとえば、
「洗面台の前に立つ時間が長い」
「収納から物を取り出すたびにかがむ」
「ドライヤーを使う場所が決まっていない」
「椅子を置きたいけれど邪魔になる」
といった不便です。
リフォームを考えるときは、「洗面台を新しくする」だけでなく、朝起きてから洗面所を出るまでの動作を一度振り返ってみましょう。
✅どこで立つのか。
✅どこで座りたいのか。
✅何を取り出すのか。
✅どこを移動するのか。
これを整理すると、必要な変更が見えやすくなります。
「将来のため」だけで考えなくてもいい
座れる洗面スペースというと、将来の介護や身体の変化を想像する方もいるでしょう。
もちろん、将来を考えることは大切です。
しかし、「いつか必要になるかもしれないから」という理由だけで、今の洗面所を使いにくくする必要はありません。
50代、60代の今も便利で、将来も使いやすい。そんな設備や間取りを選ぶことが理想です。
たとえば、普段は椅子を収納しておき、必要なときだけ出せるようにする方法があります。
また、カウンターを身支度だけでなく、物を一時的に置く場所として使うこともできます。
将来だけを考えるのではなく、「今も使う」という視点を持つことが大切です。
椅子を置くだけでも試せる
洗面所をリフォームする前に、まず小さなスツールなどを置いてみる方法もあります。
実際に座って、
「ここなら使いやすい」
「意外と座らない」
「椅子があると邪魔になる」
といったことを確認します。
確認をせずに造り付けのカウンターなどを設置すると、使わなくなったときに変更しにくくなります。
リフォームは、完成した後の生活を想像するだけでは分からないことがあります。
可能であれば、家具などで実際の使い方を試してみましょう。
洗面スペースで忘れてはいけない「動線」
座れる場所をつくる場合、もう一つ重要なのが動線です。
洗面所は、家族が行き来する場所でもあります。
・洗面台を使っている人の横を通る。
・洗濯機から洗濯物を取り出す。
・浴室へ移動する。
・収納からタオルを取る。
こうした動作が重なることがあります。
椅子を置いたことで通路が狭くなると、せっかくの便利なスペースが使いにくくなります。
そのため、座った状態だけでなく、家族が横を通る場合も想定して確認しましょう。
リフォーム会社には「座りたい理由」を伝える
洗面スペースをリフォームするときは、見積りを依頼する会社に「座れる洗面台にしたい」と伝えるだけではなく、なぜ座りたいのかを説明しましょう。
たとえば、
「朝の化粧を座ってしたい」
「歯磨きの後に少し休みたい」
「髪を乾かすときに座りたい」
「洗面所で洗濯物をたたむことがある」
などです。
目的が分かれば、洗面台を交換するだけでなく、カウンターや収納、椅子の置き場所などを含めて提案してもらえます。
反対に、「座れる洗面台」という商品だけを探してしまうと、商品の機能が先に決まり、実際の暮らしと合わなくなることがあります。
リフォームは商品選びから始めるのではなく、暮らし方から考えることが大切です。
良いリフォームは「必要な工事」を見極める
洗面スペースを快適にしたいからといって、洗面所を全面的にリフォームする必要があるとは限りません。
「洗面台を交換したい」ではなく、「どんな身支度を、どのように楽にしたいのか」まで伝えることが大切です。
椅子を置くだけで解決することもありますし、収納の一部を変更するだけでよい場合もあります。
「何が不便なのか」「どう使いたいのか」を整理して、その解決に必要な工事を選ぶことです。
そのため、リフォーム会社を選ぶときは、すぐに大きな工事を勧める会社だけでなく、家具の変更や部分的な工事も含めて提案してくれるかを確認しましょう。
まとめ
洗面台は立って使うものというイメージがありますが、50代・60代からは「必要なときに座れる洗面スペース」を考えてみてもよいでしょう。
大切なのは、洗面台をすべて座って使えるようにすることではありません。自分たちの身支度に合わせて、立つ・座るを選べるようにすることです。
ポイントは次の5つです。
1.洗面台をすべて座って使う必要はない
2.座って行いたい身支度を具体的に考える
3.カウンターや収納と腰掛けを組み合わせる
4.座った状態だけでなく動線も確認する
5.まず椅子などで試してからリフォームを考える
50代からの住まいでは、「将来困らないようにする」だけでなく、「今の暮らしを少し楽にする」という視点も大切です。
毎日使う洗面スペースだからこそ、小さな不便をそのままにせず、これからの暮らしに合った使い方を考えてみましょう。
リフォームをするときも、最初から商品や工事内容を決めるのではなく、「どの動作を楽にしたいのか」を整理することから始めてください。
その話を聞いたうえで、必要な工事と不要な工事を整理し、最適な提案してくれるリフォーム会社を選ぶことが、失敗を防ぐポイントです。
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