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執筆:二級建築士 安藤勉
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「この壁がなければ、リビングがもっと広くなるのに」
「リビングと隣の和室をつなげて、一つの広い空間にできないかな」
そんなふうに思ったことはありませんか?
壁を壊してリビングと隣の部屋をつなげ、広いLDKにできる家はあります。
ただし、どの壁でも自由に壊せるわけではありません。家を支えている壁や、柱・筋交い(家を補強する斜めの木材)が入っている壁は、そのまま取り除くことができないためです。
私たちは20年以上にわたり、全国のリフォーム会社の調査や、お客様からの相談に携わってきました。
実際の住宅では、同じように見える壁でも、建物の構造や壁の位置によって判断が変わります。
この記事では、壊せる壁と壊せない壁の違いや、壁を抜く前に確認しておきたいことを分かりやすく解説します。
壁を抜いてLDKを広くできる?
結論からいうと、家の構造に影響しない壁であれば、取り除いてLDKを広くできる可能性があります。
たとえば、リビングと隣の和室を仕切っている壁を取り除き、一つの広い空間にするリフォームです。
一方、その壁が家を支える役割を持っている場合は、単純に取り除くことはできません。
壁を一部残す、取り除く範囲を調整する、別の場所を補強するなど、建物に合わせた方法を検討します。
同じように見える壁でも、その役割は家によって違います。そのため、「隣の家ではできたから、わが家でもできる」とは限りません。
壊せる壁と壊せない壁の違い
住宅の壁には、主に「部屋を仕切るための壁」と「家を支える役割を持つ壁」があります。
壊せる可能性がある壁
部屋を仕切ることを主な目的とした壁は、取り除ける可能性があります。一般に「間仕切り壁」と呼ばれる壁です。
ただし、間仕切り壁に見えても、中に柱や、家を補強するための斜めの木材が入っていることがあります。この斜めの木材を「筋交い」といいます。
また、電気配線などが通っている場合もあります。
壁の厚さを測ったり、たたいた音を聞いたりするだけで、正確に判断することはできません。
そのまま壊せない壁
地震や強風から家を守る役割を持つ壁は、「耐力壁」と呼ばれます。
木造住宅では、壁の中に筋交いを入れたり、家を補強するための板を張ったりすることで、地震や強風による揺れに耐えられるようにしています。
このような壁を確認せずに取り除くと、家全体の強さやバランスに影響するおそれがあります。
壁をすべて取り除くことが難しくても、取り除く範囲を調整したり、別の場所を補強したりすることで、希望に近づけられる場合があります。
壁を抜くなどの間取り変更では、家全体の強さやバランスも考える必要があります。
→ 間取り変更リフォームで耐震性は落ちる?
建物の構造によっても判断が変わる
壁を抜けるかどうかは、建物の構造によっても変わります。
木造軸組工法(在来工法)
柱と、横方向に家を支える梁を組み合わせて建てる、日本で昔から広く使われている木造住宅の工法です。
構造に影響しない間仕切り壁であれば、取り除ける可能性があります。ただし、壁の中に筋交いや柱が入っている場合は、補強を含めた検討が必要です。
ツーバイフォー住宅
ツーバイフォー住宅は、柱や梁だけでなく、床・壁・天井を一体にして建物を支える住宅です。
壁そのものが家を支える役割を持つことが多いため、壁を抜く場合は特に慎重な判断が必要です。
鉄筋コンクリート造のマンション
マンションでは、建物を支えるコンクリートの壁を取り除くことはできません。
室内を仕切るための壁であれば変更できる可能性がありますが、管理規約による制限や、管理組合への申請が必要な場合があります。
壁の中に柱がある場合はどうなる?
壁を取り除いても、柱だけが残ることがあります。
建物を支えていない柱であれば、取り除ける可能性があります。しかし、上の階や屋根を支えている柱は、そのまま抜くことができません。
柱を取り除く場合は、その柱が支えていた上の階や屋根の重さを、別の方法で支える必要があります。たとえば、既存の梁に補強材を取り付けたり、新しい梁を加えたりして、両側の柱で支えられるようにします。
また、柱を完全になくすのではなく、あえて残す方法もあります。
柱を内装の一部として仕上げたり、格子や収納と組み合わせたりすれば、構造上必要な柱を残しながら、空間を広く見せることができます。
「柱があるから広いLDKにできない」とは限りません。残す必要がある部分を生かしながら、間取りを考えることもできます。
壁を抜くときに確認したいこと
壁を抜くリフォームでは、構造以外にも確認が必要です。
電気配線や設備の配管
壁の中には、照明やコンセントの電気配線が通っていることがあります。
キッチンや洗面所に近い壁では、水道管や排水管が通っている場合もあります。
壁を取り除くときは、これらを別の場所へ移す工事が必要になることがあります。
床・天井・壁の仕上げ
壁を取り除くと、壁があった部分の床や天井に跡が残ります。
リビングと隣の部屋で床材や天井の高さが違う場合は、つなぎ目が目立つこともあります。
そのため、壁を壊すだけでなく、床・天井・クロスなどを周囲に合わせて仕上げ直す工事が必要です。
実際には、壁を取り除く工事よりも、周囲をどこまできれいに仕上げ直すかによって、工事の範囲が変わることがあります。
広くした後の暮らしやすさ
壁をなくすと部屋は広くなりますが、冷暖房が効きにくくなったり、収納や家具を置く場所が減ったりすることもあります。
広さだけでなく、照明の位置、コンセント、収納、冷暖房なども一緒に考えておくことが大切です。
実際にはどんな工事になる?
壁の撤去を伴う間取り変更リフォームでは、まず図面と実際の建物を確認し、取り除きたい壁が家を支えているかを調べます。
そのうえで、必要に応じて次のような工事を行います。
- 壁やドア、ふすまなどの撤去
- 電気配線やスイッチ、コンセントの移設
- 柱や梁などの補強
- 床・天井・壁の補修
- クロスや床材の仕上げ直し
壁を抜くだけで終わるとは限りません。
どこまで補修や仕上げ直しが必要になるかも、実際に家を見てもらう際に確認しましょう。
図面を見れば判断できる?
建築当時の図面があれば、壁や柱の役割を確認する手がかりになります。
木造住宅の図面では、壁に付いた三角形や矢印のような記号が、筋交いの位置や向きを示していることがあります。
また、柱の位置に丸印や二重丸が付いている図面もあります。二重丸は、1階から2階まで一本で通っている「通し柱」を示す場合があります。
ただし、図面の記号や書き方は、建築された時期や図面を作成した会社によって異なります。まずは、図面の端などに書かれている「記号の説明」を確認しましょう。
これまで多くのリフォーム相談に携わってきましたが、図面と実際の建物が異なっているケースは珍しくありません。
建築後に増改築されていたり、工事中に変更されていたりすることもあります。壁の一部を開けてみなければ、内部の状況が分からない場合もあります。
そのため、図面に筋交いなどの記号がないからといって、その壁を壊せるとは限りません。
建築士でも、図面や写真だけを見て「この壁は必ず壊せます」とは判断できないのです。
実際に壁を抜けるか知りたい場合は、図面と現在の建物をあわせて確認してもらうことが大切です。
壁を抜けない場合にも方法はある
希望する壁をすべて取り除けない場合でも、広く見せる方法はあります。
たとえば、次のような方法です。
- 壁の一部を残して、取り除く範囲を広げる
- 必要な柱だけを残す
- ドアやふすまを引き戸に変更する
- 壁の上部や一部だけを開ける
- 隣の部屋と床や壁の色をそろえる
「壁を全部なくせるか」だけで考えるのではなく、どのような暮らしにしたいのかを伝えると、別の方法を提案してもらえることがあります。
使わなくなった和室は、リビングとつなげる以外にも、寝室や収納として活用する方法があります。
→ 使わなくなった和室を活用する3つの方法を見る
まとめ|わが家の壁を抜けるかは現地確認が必要
壁を抜いて、リビングと隣の部屋を一つの広いLDKにできる家はあります。
ただし、家を支える壁や柱は、そのまま取り除くことができません。必要な補強を行うことで実現できる場合もあれば、壁や柱を一部残した方がよい場合もあります。
見た目だけで、壊せる壁かどうかを判断することはできません。
「わが家でもできるのだろうか」と思ったら、まずは図面を用意し、実際の建物を確認してもらいましょう。
壁を取り除くことだけにこだわらず、希望する暮らし方を伝えたうえで、建物に合った方法を提案してもらうことが大切です。
壁や柱に関わる工事では、建物の構造を確認し、できることと難しいことをきちんと説明してくれる会社に相談することが大切です。
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