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執筆:二級建築士 安藤勉
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手すりを取り付けたい、玄関や室内の段差をなくしたい、和式トイレを洋式に変えたい。このようなリフォームには、介護保険を利用できる場合があります。
ただし、対象となる工事でも、工事を始めてから申請すると介護保険が使えない可能性があります。
大切なのは、工事店へすぐに依頼するのではなく、先にケアマネジャーなどへ相談することです。
介護保険を使った住宅改修について、まず知っておきたいポイントは次の4つです。
- 要支援または要介護の認定を受けている方が対象
- 手すりの設置や段差解消など、対象工事が決められている
- 原則として工事を始める前の申請が必要
- 対象工事費20万円を上限に、費用の7~9割が支給される
この記事では、介護保険を使ってリフォームする手順や対象工事、ケアマネジャーと工事店の役割をわかりやすく解説します。
介護保険を使ったリフォームとは?
介護保険には、高齢者などが自宅で安全に暮らせるよう、住宅の一部を改修する費用を支給する制度があります。
正式には「居宅介護住宅改修費」または「介護予防住宅改修費」と呼ばれます。
対象になるのは、原則として次のいずれかの認定を受けている方です。
- 要支援1・2
- 要介護1~5
要支援から要介護にならなければ利用できないわけではありません。要支援の認定を受けている方も利用できます。
また、介護保険被保険者証に記載された住所の住宅で、実際に生活していることが基本的な条件です。
まだ要支援・要介護の認定を受けていない場合
まだ認定を受けていない場合は、先に要介護・要支援認定の申請について相談します。
相談先は、現在の状況によって異なります。
- 自宅で生活している方:地域包括支援センターや市区町村の介護保険窓口
- 入院中の方:病院の退院支援担当者や医療ソーシャルワーカー
- すでに介護サービスを利用している方:担当のケアマネジャー
認定の申請は、本人や家族が市区町村へ行うことができます。地域包括支援センターなどに手続きを相談することも可能です。
認定前は、担当のケアマネジャーがまだ決まっていない場合があります。誰に相談したらよいか分からないときは、まず地域包括支援センターか市区町村の窓口へ問い合わせましょう。
最初にケアマネジャーへ相談する
すでに担当のケアマネジャーがいる場合は、最初に住まいで困っていることを相談します。
例えば、次のような困りごとです。
- 玄関の段差を上がるのが難しい
- 廊下や階段で転びそうになる
- 浴室で立ち上がるときにつかまる場所がない
- 開き戸を開閉しながら移動するのが難しい
- 和式トイレでは立ち座りができない
ケアマネジャーなどは本人の身体状況や日常生活の動きを確認し、どこにどのような改修が必要かを整理します。
そのうえで、「住宅改修が必要な理由書」を作成します。
これは単に「手すりを付けたい」と申請する書類ではありません。
玄関の上がり框に段差があり、現在の身体状況では昇り降りが難しいため、転倒を防ぐ手すりが必要
というように、本人の身体状況や生活上の困りごとと、工事の必要性を結び付けて説明する書類です。
介護保険の対象になる主な工事
介護保険の住宅改修では、対象になる工事が決められています。
1.手すりの取り付け
玄関、廊下、階段、トイレ、浴室などに、移動や立ち座りを助ける手すりを取り付ける工事です。
手すりは、多く付ければ安心というものではありません。本人の身長や利き手、歩く方向、立ち上がるときの動きに合わせて、位置や高さを決める必要があります。
2.段差の解消
玄関や室内の段差をなくしたり、小さくしたりする工事です。
敷居の撤去、スロープの設置、床のかさ上げなどが考えられます。
3.滑りにくく移動しやすい床材への変更
滑りやすい床を滑りにくい材料へ変更したり、畳を車いすで移動しやすい床材へ変えたりする工事です。
単なる模様替えや、古くなった床の張り替えは対象になりません。本人の身体状況から、床材を変える必要があることが前提です。
4.扉の交換
開き戸を引き戸や折れ戸、アコーディオンカーテンなどへ変更する工事です。
ドアノブの変更や、戸車の設置などが対象になる場合もあります。
5.便器の交換
和式便器から洋式便器へ交換する工事などが対象です。
洋式便器から、より便利な洋式便器へ交換するだけでは、対象にならないことがあります。
6.対象工事に伴って必要になる工事
手すりを取り付けるための壁の下地補強や、便器交換に伴う床の補修など、対象工事に直接必要な工事も認められる場合があります。
ただし、同時に行うリフォームのすべてが対象になるわけではありません。
例えば、浴室全体をリフォームする場合でも、介護保険の対象になる部分と、自己負担になる部分に分かれることがあります。
対象にならないことがある工事
次のような工事は、介護保険の住宅改修の対象にならないことがあります。
- 古くなった住宅を直すための一般的な修繕
- 住宅全体の改装や増築
- 見た目をよくするための内装工事
- 現在の身体状況では必要性が認められない工事
- 介護保険の対象工事と直接関係のない工事
- 事前申請をせずに始めた工事
将来必要になるかもしれない工事でも、現在の身体状況から必要と認められなければ、対象にならない場合があります。
工事店から「介護保険が使えます」と言われただけで契約せず、ケアマネジャーや市区町村へ確認することが大切です。
介護保険でいくら支給される?
介護保険の住宅改修では、原則として対象工事費20万円が支給限度基準額になります。
20万円がそのまま支給されるわけではありません。所得に応じて、対象工事費の7~9割が介護保険から支給され、自己負担は1~3割です。
※表にしてください
| 負担割合 | 20万円の対象工事をした場合の自己負担 | 介護保険からの支給 |
| 1割 | 2万円 | 18万円 |
| 2割 | 4万円 | 16万円 |
| 3割 | 6万円 | 14万円 |
本人の負担割合は「介護保険負担割合証」で確認できます。
工事費が20万円を超えた場合、超過した部分は原則として全額自己負担です。また、同じ工事の中に対象外の部分が含まれていれば、その部分も自己負担になります。
介護保険の対象になるのは、必要と認められた工事だけです。工事範囲を広げたり、対象外の設備を追加したりすると、自己負担が想定より大きくなることがあります。
→ 介護リフォームで予算オーバーしやすい理由を見る
工事店はケアマネジャーの紹介でなくてもよい
工事店は、ケアマネジャーなどから紹介してもらうこともできますが、本人や家族が自分で探しても構いません。
以前から付き合いのある工事店や、地域のリフォーム会社へ相談することもできます。
大切なのは、介護保険の住宅改修に必要な書類を準備できることです。
一般的に、工事店は次のような書類を用意します。
- 工事内容と内訳が分かる見積書
- 改修する場所が分かる計画図・平面図
- 撮影日が確認できる工事前の写真
- 使用する商品や部材の資料
- 工事前後の状態が分かる図面や資料
自治体によって、必要な書類や書式は異なります。工事店を選ぶときは、介護保険を使った住宅改修の申請に対応できるか確認しましょう。
介護保険の申請に対応できることに加え、本人の身体状況や暮らし方に合わせて、必要な工事を考えてくれる会社を選ぶことが大切です。
見積りや保証など、信頼できるリフォーム会社を見極めるポイントをまとめています。
ケアマネジャーと工事店は何をする?
介護保険を使ったリフォームは、ケアマネジャーだけ、または工事店だけで進めるものではありません。
※表にしてください
| 関係者 | 主な役割 |
| 本人・家族 | 生活で困っていることや希望を伝える |
| ケアマネジャーなど | 身体状況や生活動作を確認し、住宅改修が必要な理由書を作成する |
| 工事店 | 現地調査を行い、工事内容を提案して見積書・図面・写真などを準備する |
| 市区町村 | 提出された書類を確認し、介護保険の対象になるか判断する |
本人・家族、ケアマネジャー、工事店が一緒に現場を確認すると、生活上の困りごとを工事内容へ反映しやすくなります。
介護保険を使ったリフォームの手順
一般的な流れは次のとおりです。
- 要支援・要介護認定の有無を確認する
- 担当のケアマネジャーなどへ相談する
- 工事店を紹介してもらうか、自分で探す
- 本人・家族・ケアマネジャー・工事店で工事内容を検討する
- ケアマネジャーなどが「住宅改修が必要な理由書」を作成する
- 工事店が見積書、計画図、工事前写真などを準備する
- 市区町村へ事前申請する
- 自治体の確認後に工事を始める
- 工事完了後の写真や領収書などを提出する
- 審査後、住宅改修費の支給を受ける
最も注意したいのは、自治体へ事前申請をする前に工事を始めないことです。
申請前に着工すると、対象になる工事であっても支給されない可能性があります。
また、申請後に工事内容や金額を変更する場合も、工事を進める前にケアマネジャーや自治体へ相談しましょう。
支払い方法は主に2つある
介護保険を使った住宅改修の支払い方法には、主に次の2つがあります。
- 償還払い(しょうかんばらい)
- 受領委任払い(じゅりょういにんばらい)
名称は難しく見えますが、違いは、最初に工事代金の全額を支払うか、自己負担分だけを支払うかです。
償還払い(しょうかんばらい)
お客様が工事代金をいったん全額支払い、工事後の申請によって、介護保険から支給される分を受け取る方法です。
例えば、介護保険の対象工事が20万円で、自己負担割合が1割の場合でも、工事店へはいったん20万円全額を支払います。
その後、申請が認められると、介護保険から18万円が支給されます。最終的な自己負担は2万円です。
受領委任払い(じゅりょういにんばらい)
お客様が自己負担分だけを工事店へ支払い、残りは自治体から工事店へ直接支払われる方法です。
対象工事が20万円で、自己負担割合が1割の場合、お客様が工事店へ支払うのは2万円です。残りの18万円は自治体から工事店へ支払われます。
最初に工事代金の全額を用意する必要がないため、お客様の一時的な負担を抑えられます。
※表にしてください
| 支払い方法 | 工事店へ最初に支払う金額 | 介護保険からの支払い |
| 償還払い | 工事代金の全額 | 後からお客様へ支給 |
| 受領委任払い | お客様の自己負担分だけ | 自治体から工事店へ直接支給 |
受領委任払いを利用できるかどうかは、自治体によって異なります。また、利用できる工事店が、自治体に登録された事業者に限られる場合もあります。
どちらの支払い方法を利用できるか、工事を依頼する前に市区町村の介護保険窓口へ確認しましょう。
賃貸住宅でも介護保険は使える?
賃貸住宅でも、要件を満たせば介護保険の住宅改修を利用できる場合があります。
ただし、介護保険の申請とは別に、大家や管理会社の承諾が必要です。
持ち家でも、住宅の所有者が本人ではない場合は、所有者の承諾書を求められることがあります。
工事内容を決める前に、住宅の所有者へ確認しましょう。
よくある質問
ケアマネジャーから紹介された工事店に頼まないといけませんか?
自分で探した工事店へ依頼することもできます。
ただし、見積書、計画図、工事前後の写真など、自治体が求める書類を準備できる工事店を選びましょう。
工事をした後でも申請できますか?
介護保険の住宅改修は、原則として工事前の申請が必要です。
すでに工事を始めた場合は、自己判断せず、市区町村の介護保険窓口へ確認してください。
手すりは好きな場所に付けられますか?
本人の身体状況や生活動作から必要と認められる場所が対象です。
高さや位置が合わなければ、手すりを付けても使いにくいことがあります。本人の動きを確認して決めることが大切です。
20万円は毎年利用できますか?
毎年20万円まで利用できる制度ではありません。原則として、1人につき対象工事費20万円が支給限度基準額です。
転居した場合や要介護状態が著しく重くなった場合など、再度利用できることがあります。詳しくは市区町村へ確認してください。
まとめ|工事店へ依頼する前にケアマネジャーへ相談する
介護保険を使ったリフォームでは、手すりの取り付けや段差解消、床材・扉・便器の変更などが対象になります。
ただし、対象工事であっても、本人の身体状況から必要性が認められなければ支給されない場合があります。
まずは担当のケアマネジャーへ、担当者がいない場合は地域包括支援センターや市区町村の窓口へ相談しましょう。
その後、ケアマネジャーなどが必要な理由書を作成し、工事店が見積書、計画図、工事前写真などを準備します。
工事店はケアマネジャーから紹介してもらうことも、自分で探すこともできます。
大切なのは、工事内容を先に決めて着工するのではなく、本人・家族・ケアマネジャー・工事店で必要な改修を検討し、市区町村への事前申請を済ませてから工事を始めることです。
なお、必要書類や支払い方法、対象工事の判断は自治体によって異なる場合があります。具体的な手続きは、お住まいの市区町村へご確認ください。
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