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執筆:二級建築士 安藤勉
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大きな地震が起こると、
「うちの家は大丈夫だろうか。」
「耐震診断を受けた方がいいのかな。」
と不安になる方も多いのではないでしょうか。
特に築年数の古い住宅では、「今の耐震基準を満たしているのだろうか」と気になることもあると思います。
一方で、
「耐震診断って何をするの?」
「診断を受けたら工事を勧められるのでは?」
という疑問をお持ちの方も少なくありません。
実際には、耐震診断を受けたからといって、必ず耐震補強工事が必要になるわけではありません。
大切なのは、不安だけで判断するのではなく、現在のお住まいの状態を正しく知ることです。
この記事では、耐震診断を検討したい住宅の目安や耐震基準、自治体の補助制度、地震後に注意したい点検商法まで、建築士の立場から分かりやすく解説します。
【建築士からのメッセージ】
この記事は、不安をあおるためでも、耐震工事を勧めるためでもありません。
地震が起こると、
「すぐに点検しなければ。」
「今すぐ工事をしなければ。」
と考えてしまうことがあります。
しかし、多くの場合、慌てて工事を契約する必要はありません。
まずは現在のお住まいの状態を知り、その結果をもとに必要な対策を判断することが大切です。
私たちは、工事を勧めるためではなく、住まいについて正しい判断をしていただくために情報をお伝えしています。
この記事で分かること
✅耐震とは何か
✅耐震診断を検討したい住宅の目安
✅築年数と耐震基準の関係
✅耐震診断の費用と自治体の補助制度
✅耐震診断では何が分かるのか
✅地震後の点検商法への注意点
耐震とは?まず知っておきたい基本
耐震とは、地震が起きても建物が倒壊しにくいようにするための性能のことです。
建物は、地震でまったく揺れないように造られているわけではありません。
ある程度揺れることを前提に、大きな地震でも建物の倒壊を防ぎ、住む人の命を守れるよう設計されています。
そのため、
「耐震性能が高い住宅=まったく被害が出ない住宅」
という意味ではありません。
大切なのは、大きな地震でも建物が倒壊しにくく、住む人の命を守り、安全に避難できることです。
つまり、耐震の目的は、建物を無傷に保つことではなく、地震から人の命を守ることです。
耐震診断とは?
耐震診断とは、建物の図面や現地調査をもとに、現在のお住まいがどの程度の耐震性能を備えているかを専門家が調べることです。
建物全体のバランスや壁の配置、劣化状況などを総合的に確認し、
- 現在の耐震性能
- 地震に弱い部分
- 必要に応じた補強方法
などを評価します。
診断結果は、数値や図面を使って説明されることが一般的です。
そのため、
「どこが弱いのか。」
「どのような補強をすれば効果的なのか。」
を具体的に知ることができます。
また、耐震診断を受けたからといって、必ず耐震補強工事が必要になるわけではありません。
健康診断を受けたからといって、必ず手術が必要になるわけではありません。
耐震診断も同じです。
現在のお住まいの状態を客観的に把握し、その結果をもとに必要な対策を判断するために行うものです。
まず確認したいのは住宅が建てられた時期です
住宅の耐震性を考えるうえで、最初に確認したいのが住宅が建てられた時期です。
日本では、大きな地震の被害を教訓として、建築基準法の耐震基準が見直されてきました。
特に木造住宅では、「1981年」と「2000年」が一つの目安になります。
1981年(昭和56年)以前の住宅
1981年6月に建築基準法の耐震基準が大きく改正されました。
それ以前に建てられた住宅は、一般的に「旧耐震基準」の住宅と呼ばれています。
現在でも問題なく住み続けられている住宅は数多くあります。
そのため、
1981年以前に建てられた住宅=危険
というわけではありません。
建物の構造や間取り、これまでの維持管理、増改築の有無などによって耐震性は異なります。
まずは現在のお住まいの状態を確認することが大切です。
1981年以降でも確認したい住宅があります
1981年以降は「新耐震基準」となりました。
しかし、熊本地震では、1981年から2000年頃までに建てられた木造住宅にも被害が見られました。
そのため、この時期に建てられた住宅でも、増改築をしている場合や劣化が気になる場合は、一度耐震性を確認しておくと安心です。
2000年頃も一つの目安です
2000年には、木造住宅の耐力壁や接合部などの基準がより明確になりました。
2000年以前に建てられた木造住宅でも、適切に維持管理されている住宅は多くあります。
一方で、築年数や建物の状態によっては、耐震診断を受けることで安心につながる場合もあります。
築年数だけで安全・危険を判断せず、建物の状態もあわせて確認することが大切です。
次は、ご自宅が耐震診断を検討した方がよい住宅に当てはまるか確認してみましょう。
こんな住宅は耐震診断を検討しましょう
すべての住宅が耐震診断を受けなければならないわけではありません。
まずは築年数や住宅の状態を確認し、必要に応じて専門家へ相談することが大切です。
次のような住宅では、一度耐震診断を検討してもよいでしょう。
- 1981年以前に建てられた住宅
- 1981年から2000年頃までに建てられた木造住宅
- 増築や大きな間取り変更をしている
- シロアリ被害や木材の腐食があった
- 雨漏りを長期間放置していた
- 基礎に大きなひび割れがある
- 床の傾きや建具の開閉が気になる
これらに当てはまるからといって、耐震性に問題があるとは限りません。
反対に、見た目では分からない場所に構造上の弱点が隠れていることもあります。
気になる場合は自己判断せず、専門家へ相談することをおすすめします。
耐震診断の費用と自治体の補助制度
耐震診断の費用は、一般的な木造住宅で5万円~15万円程度が一つの目安です。
ただし、多くの自治体では耐震診断の補助制度や耐震診断士の派遣制度を設けています。
自治体によっては、
- 無料で耐震診断士を派遣
- 数千円程度の自己負担で診断
- 診断費用の大部分を補助
といった制度があります。
また、耐震補強工事に対する補助制度を設けている自治体もあります。
制度の内容や対象となる住宅は自治体によって異なりますので、まずはお住まいの市区町村へ確認してみましょう。
なお、自治体によっては、申請前にご自身で耐震診断を依頼すると補助の対象外になる場合もあります。
そのため、先に業者へ依頼するのではなく、まず自治体へ相談することをおすすめします。
まず役所へ相談する。これが、安心への第一歩です。
地震のあとに注意したい「点検商法」
大きな地震のあとには、
「近くで地震があったので無料で点検します。」
「このままでは危険です。」
「今日契約すれば安く工事できます。」
など、不安をあおって契約を急がせる悪質な業者とのトラブルが増える傾向があります。
耐震診断は、建築士などの専門家が図面や現地調査をもとに行う専門的な業務です。
住宅を少し見ただけで、
「今すぐ工事が必要です。」
と判断できるものではありません。
本当に信頼できる専門家であれば、その場で契約を迫ることはほとんどありません。
不安を感じても、その場で契約せず、家族や信頼できる専門家へ相談しましょう。
※点検商法について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
まとめ
地震が起きると、不安になるのは当然です。
しかし、不安な気持ちだけで工事を契約する必要はありません。
まずは住宅が建てられた時期を確認し、お住まいの自治体へ耐震診断制度について相談してみましょう。
必要であれば、建築士などの専門家による耐震診断を受け、現在のお住まいの状態を把握することが大切です。
健康診断を受けたからといって、必ず手術が必要になるわけではありません。
耐震診断も同じです。
現在のお住まいの状態を知り、その結果をもとに必要な対策を判断するためのものです。
住まいの安全は、不安だけで判断するものではありません。
正しい情報を知り、専門家による診断を受けたうえで、ご自身のお住まいに合った対策を考えることが大切です。
診断してから判断する。
それが、大切な住まいと、ご家族を守る第一歩です。
耐震について不安な方へ
1981年(昭和56年)以前の基準で建てられた木造住宅であれば、多くの自治体で耐震診断の補助制度や耐震診断士の派遣制度が用意されています。
耐震性に不安がある方は、まずお住まいの市区町村へ相談してみましょう。
一方、
「耐震診断を受けた方がいいのか分からない」
「どこへ相談すればいいのか分からない」
という場合は、地域で実績のある工務店やリフォーム会社に相談するのも一つの方法です。
建物の状況を確認したうえで、耐震診断が必要かどうかも含めてアドバイスしてもらえるでしょう。
ただし、工事会社によって知識や経験、提案内容には差があります。また、地震のあとには、不安をあおって契約を急がせる業者とのトラブルも少なくありません。
相談先を選ぶ際は、慌てて契約するのではなく、信頼できる会社かどうかを見極めることが大切です。
相談先に迷った場合は、会社選びのポイントをまとめたこちらの記事も参考にしてください。
耐震についてもっと詳しく知りたい方へ
この記事では、耐震診断が必要か判断する目安についてご紹介しました。
さらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
→ 1981年以前の家は危ない?旧耐震・新耐震基準を建築士が解説
→ 地震のあと自宅は大丈夫?住宅で確認したいチェックポイント
耐震以外も含めて、住まいの悩みをどこへ相談すればよいか迷っている方はこちらも参考にしてください。
→ リフォームはどこに頼む?住まいの悩み別に相談先・依頼先を建築士が解説